マッズ・ピーダスン「(アルカンシェルを着て)なくても僕は大丈夫だ」自然体な若き世界王者
Photo by Jérémy-Günther-Heinz Jähnick on WIkipedia

多くのファンが怪物マチューの覚醒を期待した昨年の世界選手権、だれも予想しなかった世界チャンピオンが誕生しました。

マッズ・ピーダスン。当時23歳のニューフェイスです。

世界王者の証である虹色のジャージ、アルカンシェルを着て臨んだ2020年のツアーダウンアンダーでは、絶対的エースであるリッチー・ポートのアシストとして総合優勝に貢献。サガン、バルベルデといったプロトンの「主役」たちの後を継いだことで、世界王者としては「ネームバリュー不足」とも一部では囁かれる若者のインタビューをまとめました。

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(アルカンシェルを着て)なくても僕は大丈夫だ

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“I could be without it,”
抄訳:(アルカンシェルを着て)なくても僕は大丈夫だ。

豪メディアCYCLINGTIPSがツアーダウンダンダー中にインタビューした際に、ピーダスンはこんなコメントを残しました。

同メディアの記事によればペデルセンは「even less interested in answering questions and appearing on camera.(カメラにアピールしたり質問に答えたりすることに消極的だった)」といいます。サガンがメディアを煽りファン受けするような名言を数多く残し、ファンに対しても数々の神対応をしていたのに対し、ペデルセンは目立つことを避けているようだ、と。

「世界王者だからといって、必ずしもリーダーなわけじゃない」

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“In the media I get a lot of pressure and people don’t always understand that just because you’re a world champion, [doesn’t mean you’re] the leader,<中略> Just because I won world championships doesn’t mean that I’m such a better rider.<中略>I still have to work and this is a race for Richie [Porte], so I’m picking up bottles for him.”
抄訳:メディアでは多くのプレッシャーにさらされる。世界王者だからといって、必ずしもリーダーなわけじゃないってことをみんな理解してないんだ。世界選手権に勝ったいうだけで、僕が他よりずっと優れてるということにはならない。<中略>僕にはする仕事があるし、これ(ツアーダウンアンダー)はリッチーのためのレースだ。だから僕は彼にボトルを運ぶ。

ちょっと冷静に考えればわかるのですが、アルカンシェルを着てるからと言って常にリーダーを任されるとは限りません。

ツアーダウンダンダーでいえば、ピーダスンはあくまでポートのアシスト。そして決して無視できない事実として「ペデルセンがいなければリッチー・ポートは総合優勝できなかった」と言われるほど、彼のアシストには光るものがありました。ポートはその働きを称賛して次のようなコメントを残しています。

“Mads pretty much single-handedly took two minutes out of the 26 guys up the road,” Porte says later. “He’s a fantastic guy. When he won Worlds — a few days after, he said to me that he would come down to Tour Down Under and help me to try and win the race.”
抄訳:ほぼ一人でマッズは2分差ついた26人の逃げを捕まえた。素晴らしい男だよ。世界選手権に勝った数日後に、彼は僕にこう言ったんだ「ツアーダウンダンダーではアシストをさせてくれ。君に勝たせてみせる」

ポートのためにボトルを運び、無線を直し、逃げに乗り、逃げをつぶし、ポートを牽引し…。アシストとしてチームに期待されたありとあらゆる役割を果たした彼は132位でレースを終えています。

確かにピーダスンにはサガンやバルベルデのようなスター性はまだないかもしれません。それでも、若くして精神的に成熟したプロフェッショナルな自転車選手だということは、これも同じくらい確かにいえることなのではないでしょうか。

「父がトラック運転手をしなくてもすむように、僕は自転車屋を開いた」

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“My family is really important to me and it’s important for me to stay around. My dad is working in my bike shop. I opened it so that he had something to do. <略> I said that when I was 15 that if I ever earned enough money from cycling to help him stop being a truck driver then I would do it.”
抄訳:家族と一緒にいることは、僕にとってとても大事なことだ。父は僕の自転車屋で働いてる。彼がなにかできるようにと僕が開いたんだ。<略>15歳の時に、もし僕が将来自転車でお金を稼げるようになったら、父がトラック運転手をしなくてもすむように(自転車屋を開く)と約束したんだ。

昨年の世界選手権でだれよりも注目を浴びていたマチューと、注目されずにタイトルをさらったピーダスンは、実は2013年のジュニア世界選手権でも直接対決をしています。マチューが集団から一人抜け出し、後続の先頭をスプリントでとったピーダスンは2位となりマチューの後塵を拝す形になりました。

それから6年後の2019年、ピーダスンは世界選手権という同じ大舞台でマチューに対して鮮やかなリベンジを果たしたのです。

同年代のマチューが自転車界のレジェンドたちからなるサラブレッド一家で育ったこととは対照的に、ピーダスンは自転車とは全く無縁の家族の中で育ちました。サッカーやバトミントンをやってもチームスポーツが性に合わず、トラック運転手だった父の買ってくれた自転車にハマり始めます。

2013年にジュニア世界選手権で2位に入り、翌2014年にコンチネンタルチームに加入。2015年には若手の登竜門ツールドラヴニールで、2016年にはツアーオブノルウェーでステージ優勝を飾るなど順調に勝利を重ねたピーダスンは、2017年にトレックでワールドツアーデビューを果たします。

「これははじまりでしかない」契約延長も手にした彼がめざすもの

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トレック加入後の翌2018年ツールドフランドルでは、40年間で表彰台に乗った選手のうち最も若いという22歳での2位。そして昨年の世界選手権優勝と、若くして一気にスターダムをのし上がったピーダスン。トレックは2022年までの契約延長にこぎつけました。

2018年ツールドフランドルの2位という好成績は言わずもがな、ジュニア時代にはパリ~ルーベで勝利を収めているピーダスン。狙うのはもちろん春先のクラシック、特にパリ~ルーベです。しかし、2019年はチーム全体として不調に喘ぎ、本人もツールドフランドルではDNF、パリ~ルーベでは51位と不本意な成績に終わりました。

2020年はその悔しさを晴らすシーズンとなるのでしょうか。本人が望もうとも望まなくとも、虹色のジャージに注目が集まるクラシックとなりそうです。

“I really want to win Paris-Roubaix. I won it as a junior and I want that big cobblestone at home. I won't say I will win it this year because I know how difficult it is to win those Classics but hopefully I have a few more years at the top level. But if I win Flanders and not Roubaix by the end of my cycling career then I’ll still be proud. I’m still hungry though. This is just the beginning. I’m only 24 and I want more,” Pedersen told Cyclingnews.
抄訳:パリ~ルーベに勝ちたい。ジュニアの時に勝って以来、あの大きな石畳の石(※パリ~ルーベのトロフィー)を家に飾りたいと思い続けているんだ。(昨年の不調を経験して)春先のクラシックで勝つことがどれだけ大変なことか知ってるから今年勝つとは言えないけど、あと数年はこの良い状態を保てると願っている。引退するまでにフランドルとルーベに勝てれば自分を誇りに思えるはず。まだまだ僕はハングリーだ。これ(世界選手権優勝)は始まりに過ぎない。それに僕はまだ24歳で、もっと多くを望んでるんだ。

陽気なセールスマン


父親のために自転車屋を開くいい男、ピーダスンが自転車屋のセールスマンっぽくTREKマドンを紹介する動画がこちらになります。Youtuber顔負け(?)の軽快なセールストーク。謙虚で自然体で、メディアは苦手で、ちょっと陽気な世界王者。応援したくなりました。

参考ソース

 

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