陸上出身ジェームス・ウィーラン(23)。バーチャルレースで頭角を現した持ち前のフィジカルタフネス。
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デジタル・スイスで気になった選手を深堀り。

今回紹介するのはジェームス・ウィーラン(23)。EFに所属するオーストラリアの若手です。

デジタル・スイスで見せたタフネス

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バーチャルレースに関するコメントで一番しっくり来たのは「ランプテストの感覚」というもの。だんだんきつくなって、あがりきったところでずっとパワー維持する感じ。ということでストイックでフィジカルモンスターな選手たち、例えばTTスペシャリストが強さを発揮した今回のデジタル・スイス。

ステージ優勝こそなかったものの、第1Sで3位、第3Sで5位、最終第5Sでは序盤から積極的にレースを作っていくなど地味に強さをみせたのがジェームス・ウィーランです。

そのフィジカルパフォーマンスだけでなく、地味な展開になりがちなバーチャルレースの序盤で仕掛けて盛り上げるというプロ精神も印象的でした。そんなウィーランの過去がちょと面白かったのでご紹介。

陸上を辞めて2年でプロ入り

ウィーランはつい4年前まではランナーとしてトップ選手を目指す若者でした。専門は1500mなどの中距離。ロードレースデビューしたきっかけは、陸上競技でアキレス健をけがしたことから。

今まで趣味兼クロストレーニングの一環として乗っていた自転車を2017年1月に本格的に始めたウィーランは地元のクリテリウムで数多くの勝利を重ね、すぐに国内シリーズで戦うInform MAKEに加入。そして翌2018年のロンドファンフランデーレンU23では、ヨーロッパ初遠征、ヨーロッパ初レースで初優勝を遂げます。2019年にはワールドツアーチームのEFと契約。本格的に競技をはじめてからたったの2年で辿り着くという快挙でした。

これだけ聞くとトントン拍子にも見えますが、その裏にはウィーランの揺るがぬ意志があったということは忘れられがちな事実です。

自ら動いてつかんだ欧州遠征。U23ロンド優勝の実力

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実は2017年、オーストラリアの競技連盟は東京オリンピックに向けたトラックチーム強化に注力することを決定。その憂き目にあったロード選手育成プロジェクトの一環であるワールドツアーアカデミーチーム※は解散となります。

ジャック・ヘイグ、ルーク・ダーブリッジ、マイケル・マシューズなどトップ選手を輩出し続けてきたオーストラリアのロード強化育成プログラムの肝ともいえる団体。

アカデミーチームの解散は、U23の選手たちが今までのように欧州遠征できなくなることを意味しました。資金を潤沢に使うことができなくなったから。

それでもU23最終年のうちにどうしても欧州で結果を残したいウィーランはアカデミーチームの元マネージャーや関係者に連絡を取って自らの戦績とやる気をPR。同年のU23国内選手権RR2位、TT6位、U23オセアニア選手権2位などの戦績もさることながら、「お金は自分で出す」と覚悟を見せことでナショナルチームとしての遠征が実現します。

当時21歳、一度もヨーロッパのレースを走ったことのない若者としてはあっぱれな大胆さ。その勢いそのままに、先述のロンド勝利をつかんだのです。国内選手権での活躍を買われてEFプロサイクリングの下部組織ドラパックEFに加入していたウィーランは、欧州レースでの実績など着実な成長が認められ翌2019年に兄貴分であるワールドツアーチームと3年契約を結びます。

自身初のエリートカテゴリーとなった2019年の国内選手権では最終局面までトップ10に位置付けながらも落車。しかしその直後、ワールドツアーデビュー戦となったツアーダウンダンダーでは落車の影響を感じさせない走りでチームメイトのベッティオールなどを強力にアシスト、地元ファンを沸かせました。今まで目立った成績は残せていませんが、今年と来年は勝負の年となりそうです。

ネクスト・マイケル・ウッズ?

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陸上出身と言えばチームメイトのマイケル・ウッズ。陸上選手時代は怪我で苦しみながら、自転車選手に転向して5年目の2018年にヴェルタステージ優勝や世界選手権3位、2019年にはミラノトリノで勝つなどチームの中心的存在となった選手です。

ウィーランはまだ発展途上。今回のデジタル・スイスで見せた持ち前のフィジカルを活かせる走りができるようになれば、才能の開花はそう遠くはないのかもしれません。リアルのレースでの活躍も楽しみにしましょう。

参考ソース

 

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