アルベルト・ベッティオール。2018年、最も残念だった7人に選ばれた男の復活ロンド勝利。
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今でも勝ったことを信じられないし、今ここで何をしているのか、何を話しているのかも実感がない

21歳のときにキャノンデールでワールドツアーデビュー

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2014年、21歳でベッティオールはジョナサン・ヴォーターズの門下に入りました。2011年のヨーロッパTTジュニアチャンピオンという看板を引っさげてプロデビューした彼にとって、プロ3年目でのワールドツアーデビューでした。2年後の2016年には早くも結果を残し始め、メジャーなワンデーレースでトップ10フィニッシュを繰り返します。極めつけは、ツール・ド・ポローニュでの総合3位フィニッシュ。ワンデーだけでなく、グランツールでの活躍も期待させるリザルトとなりました。

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メディアの注目を大きく集めることはありませんでしたが、2017年も同様にワンデーレースやグランツールのステージで上位フィニッシュを続け、奮わないチームメイトを補ってあまりあるほどのリザルトで、チームランキングのポイント獲得に大きく貢献。ステルスモードでじわりじわりと勝利に近づいていきます。

BMCに移籍。度重なる鎖骨骨折でシーズンを棒に振る。

2018年、解散の危機に瀕したEF-Drapacから、ベッティオールはBMCへの移籍を決断します。

I chose BMC because it's one of the biggest teams in the WorldTour, because they love time trials, because they love the northern Classics, and because they really want me at the Tour de France. "They were pretty keen to invest money in me, so I choose BMC because I felt that they really wanted me. I think it's the perfect team to do that step that I need. <略> At Cannondale we never talked about the time trial, it was not a goal of the team, Also the brand I think is not ready – the bike, they invest a lot in disc brakes, but the time trial bike, no. BMC likes time trialling, it's a different goal, a different investment.

BMCを選んだのは、ワールドツアーで最も大きなチームの一つで、TT・北のクラシック・ツールで僕を必要としてくれていたし、かなりのお金も用意してくれたからだ。 <略> キャノンデールでは、僕らはほとんどタイムトライアルの話をしなかったし、TTバイクでの練習なんてほとんどなかった。それがチームの目標ではなかったから。でもBMCはTTへの情熱がすごくて、専用スタッフすらいる。僕はヨーロッパTTジュニアチャンピオンになってこの世界に入ってきた。だからもう一度その世界に戻ってみたい。

グレッグ・ヴァン・アーベルマートの強力なアシストとしての役割を期待されての移籍、そしてTT重視というチームカラーを気に入っての決断でしたが、一方で、19歳という若さでプロデビューした彼独特の悩みも語っていました。

I turned pro very young, and I think I was not ready enough to race at such a high level, where I'm riding now. It was a risk, but I thought at the same time at least I'm a pro rider and I could learn faster how this world works. After two years, in 2016, I started to find myself, and this year I confirmed again that I can compete at such a high level, so the goal for sure for next year is to keep improving, and for sure to catch some victories as well.

僕は若くしてプロになった。当時はそんなハイレベルなレースに準備できてないと感じていたし、リスクだった。でも同時に、少なくとも僕はプロになったんだし、より早く多くを学ぶことができると思っていた。2016年には、プロのレベルで自分がやっていけると確信した。だから来年(2018年)の目標は向上し続けること、そしていくつかの勝利を手に入れることだ。

希望に満ち溢れた、新しい環境でのシーズンインでしたが、その期待と希望とは裏腹に2018年は最悪のシーズンとなっていまいます。ティレーノ~アドリアティコのチームTT勝利で幸先よくスタートするも、活躍が期待されたロンド・ファン・フランデーレンは落車でレースを降り、さらに、リエージュ~バストーニュ~リエージュでも落車をして鎖骨を骨折してしまいます。結果として既に決まっていたジロ出場を逃し、移籍時には話に上がっていたとされるツールのメンバーからも落選するありさま。更に、シーズン後半にも再度鎖骨を骨折し、10月に復帰するも目立った成績は残せず、英メディアCyclingnewsの”2018年、残念だった移籍選手7人”に不名誉にも選ばれてしまいました。

師・ヴォーターズのもとに復帰。本来の力を取り戻す。

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(ミラノ〜サンレモ、勝負のポッジオでアタック合戦の口火を切ったのもベッティオール。)

BMCで結果を残せなかったベッティオールは、1年で古巣のEFに復帰することになりますが、その際、ヴォーターズは以下のように語っています。

“Alberto showed great promise when he was with us,” said Slipstream CEO Jonathan Vaughters. “He was climbing near the best at the 2017 Tour de France, and he was a key part of our Classics team. He got a bit derailed in 2018, but we are going to get him back on track."

アルベルト(・ベッティオール)の将来性は絶対だ。2017年のツールではチームの誰よりも登れていたし、クラシックでも重要な役割を担っていた。2018年は少し脱線したかもしれないが、我々は彼を元いた場所に連れ戻す。

男前なヴォーターズの期待に応えるように、2019年シーズンのベッティオールは元の力を取り戻し、シーズン序盤で早くも結果を残します。ティレーノ~アドリアティコでステージTOP10に3回ランクインして総合11位、E3では4位に。上々の結果となったE3の直後には、こんな言葉を残していました。

“Last year, I had two big crashes and now I’m a bit scared staying in the peloton. I know I have to work on it, and my team are really supporting me to try to help me. Today, Mitch Docker and Moreno Hofland did a really good job to try to put me at the front as much as possible but it’s a really hard job for them because I’m a bit too scared. But fortunately, I have these super legs, so I could chase back to the front, but in the end the energy is really low. That’s the only thing I have to improve on.”<略>“I feel really good here, and since I joined back this year, we’ve seen some good results,” Bettiol said. “Unfortunately, the victory doesn’t want to come, but I hope it will come soon.”

昨年の2つの大落車のせいで、実はまだプロトン内で走るのがまだ怖い。どうにかしなきゃいけないし、チームはそれをサポートしてくれている。今日はチームメイトがとてもいい仕事をしてくれて僕を集団前方に引き上げようとしてくれたけど、僕が怖がっていたせいで普通よりずっと大変だったと思う。でも幸運なことに、僕には素晴らしい足があったから前方に位置どれた。とは言っても、スプリントの最後までのエネルギーは残っていなかったんだ。そこだけが改善すべき点だ。<略>調子はすごく良いし、EFに戻ってから結果は出ている。不幸なことに、勝利は僕のもとに来たがらないみたいだけど、そのうちくると信じている。

そしてその次の週、勝利の神様に恵まれなかった彼のもとに、ロンド・ファン・フランデーレンの勝利という大金星がやってきました。ステルスモードから一転、自転車ロードレースのスターダムにのしあがったのです。おめでとうベッティオール。

参考ソース:

 

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