イネオスGMブライルスフォードの右腕はバーレーンメリダに改革をもたらすかー「イギリス自転車界で最も過小評価されている男」ロッド・エリングワースの挑戦
Photo by dylan nolte on Unsplash

ロッド・エリングワースをご存知でしょうか。

スカイ(現イネオス)を率いるGMデイブ・ブライルスフォードと常に二人三脚を組んでイギリス自転車選手たちを強化してきた、いわば「ブライルスフォードの右腕」です。そのエリングワースが今年4月ブライルスフォードの元を離れ、来シーズンからバーレーン・メリダを率いることが発表されました。

なぜ、彼はイネオスを離れてバーレン・メリダに加わるのでしょうか?

(金では?)

という心の声はそっとしまって、ぜひそんな彼の言葉を聞いてみましょう。

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衝撃をもって受け止められたブライルスフォードからの離別

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今年4月、各チーム陣営に衝撃をもたらしたニュースがあった。

「ロッド・エリングワースがイネオスを離れ、バーレン・メリダへと移籍する」

彼がBritish Cycling Academy Programmeを立ち上げたのは2004年、その門をくぐった選手の数は数え切れない。マーク・カヴェンディッシュ、ゲラント・トーマス、エド・クランシーなど錚々たる選手がその門下生として名を連ねる。5つのオリンピック金メダル、12個のトラック世界選手権タイトル、ロードレース世界選手権タイトル、51個のグランツールステージ勝利、そしてツール総合優勝。指導者としては実績文句なしの折り紙付きだ。

実際、チームスカイに関わる書籍、G・トーマスやフルームの自伝にもエリングワースは何度も登場するキーパーソンであることはマニアックな自転車ファンであれば誰でも知っている。

発表があった当時、フルームは彼の離脱はBig Blow(大きな痛手だ)と語り、その腕前を高く評価しているのだ。

“He was extremely good at planning and organising all the pieces behind the scenes that bike riders don’t necessarily see all the time but I know Rod was fundamental to a lot of the big decisions behind the scenes,”

(拙訳:彼は計画に非常に長けていて、選手たちであれば知る必要がないことまで把握してそのすべてのピースを組み合わせる。ロッドの意見は様々な大きな決断において、常にベースとなっているんだ)

しかし「マージナル・ゲイン」を始めとする理論を世間に問うてきたチームのGM、デイブ・ブライルスフォードに比べて彼が表に出てくる機会はそう多くない。

そんなエリングワースをカヴェンディッシュはこう評したことがある。

「イギリス自転車界で最も過小評価されている男」

なぜエリングワースはスカイ改めイネオスを離れる決断をしたのだろうか。

「別にスカイやブライルスフォードに不満があったわけじゃない」

まず素人考えで思いついてしまうことは「不仲説」だろう。

私達は別れ話とか、他人同士のいがみ合いについての噂話が大好きだ。

しかし、インタビューで聞かれたエリングワースはこう答える。

Ultimately, Ellingworth says, it was nothing to do with Sky or Ineos or any of the people there, who he describes as “like family”. “I wasn’t p----d off. It was fine. It was just starting to feel a little bit Groundhog Day. I wasn’t as motivated by the new challenge as I should have been. I needed something new.”

(拙訳:エリングワースは語る。この決断はスカイにもイネオスにも、そこにいる人々(ロッドは彼らのことを”家族みたいなもの”と語る)にも全く関係がない、と。「別に不満があるからやめるわけじゃない。毎日が同じ日の繰り返しのように感じ始めただけだ。このチームでの新しい挑戦に以前と同じように熱くなれなくなってきた。何か新しいものが必要なんだ」)

エリングワースは不満ではなく、単純に新たなチャレンジの機会を求めた。そう言っていい。

18年間にもわたってブライルスフォードとともに苦楽をともにし、気づけば47歳になったエリングワースは既に脇を固めるスタッフ陣をリクルートしはじめているという。

マクラーレンの技術力という「ぶら下げられた人参」

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マクラーレンとバーレーン・メリダの提携。このニュースは自転車界を興奮させ、ジロでお披露目されたマクラーレン仕様のチームカーがSNS上で拡散された。

エリングワースにとっては、この提携が(少なくとも彼自身の弁によれば)移籍の一番の理由のようだ。そのマクラーレンのキーパーソンはマクラーレン・アプライド・テクノロジーズ(マクラーレン応用技術部門)のダンカン・ブラッドリー。詳細は不明で裏もとってないが、マクラーレンのデザイナーとしてスペシャライズドと提携し、VengeやRoubaixの設計にも関わっていたというネット記事も散見される。

“He is very much one of the reasons I wanted to get involved,” Ellingworth says. “If you want an innovation hub then McLaren Applied Technologies is one of the best in the world. And Duncan is MAT. Ron [Dennis] brought him in. I see Duncan as absolutely critical to our potential success. He’s a massive asset for us.”

(拙訳:彼の存在が一番大きな理由だ。もしイノベーションハブがほしいなら、マクラーレン応用技術部門(MAT)は選びうる選択肢の中でもベストの一つだ。そしてダンカンこそがMATそのものだ。ローハン・デニスが彼を引き入れた。私はダンカンこそが成功への鍵だと思っているし、チームにとって重要な資産だ)

スカイがピナレロとがっつり組んでバイクを開発したように、バーレーン・メリダは徹底的にマージナル・ゲインを突き詰めるのだろうか。ただ、ローハン・デニスがダンカンを引き入れたという点が少し引っかかる。この先どのような展開が待っているのかは妄想するしかない。

「ローハン・デニスにはチームに残ってほしかった」

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マクラーレンとの提携でロードレース界に話題を振りまいたチームに芳しくない空気が流れ始めたのはツールの真っ最中。

チームの中心的存在でTTスペシャリスト、近い将来総合系の選手としての活躍を期待されていたローハン・デニスが突然レースを去ったのだ。

続いて、先月の世界選手権個人TTでは、デニスはチームが供給するものではない機材を使って優勝。さらに世界選手権終了後にはチームからの脱退が発表された。

エリングワースはこのキーマンの離脱を残念がった。

“One thing I will say is I wanted Rohan to stay,” Ellingworth says. “He was definitely a part of my long-term plans so I’m disappointed at the way things have panned out.”

(拙訳:ローハン・デニスには残留してほしかった。彼は間違いなく私の長期計画において重要なキーパーソンだったから、この結果には落胆している。)

去るニバリとデニス。来るランダとプールス。

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(かつてチームメイトでもあったプールスとランダ)

チームのエース、ニバリが去ったのに加えてのデニスの離脱。何かチームに問題があるのでは??とそこかしこで噂話が巻き起こったものの、エリングワースは前を向く。

「目標についてはこれからチームと議論をする」とは言いながら、モビスターから加入するランダ、イネオスから加入するプールスを戦力としてまずは考えていると。飛ぶ鳥を落とす勢いで強さを増すユンボビスマに次いで、イネオスを轟かす存在になることはできるのだろうか。

“Although I’ve no problem in saying that I want this team to become a grand tour-winning team,” he adds. “And yes, that means a Tour de France-winning team.” Could Poels or Landa win the Tour? “Never say never. Wout, for now I think, one-week stage races are really what he will target, at least initially.

拙訳:「私はこのチームでグランツールを勝ちたい。そう、ツール・ド・フランスに勝つチームだ。」プールスとランダでツールを勝てると?「ありえないなんてことはない。プールスに関しては、まずは1週間程度のステージレースをターゲットとすることとなる」

「カルチャーをつくる」これから始まるエリングワースの挑戦

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とはいうものの、エリングワースの挑戦はまだ始まってすらいない。

まずすべき事は“building the culture, getting to know each other, canvassing views(拙訳:カルチャーを構築し、お互いをよく知り、キャンバスにビジョンを描く)”だと語るエリングワースにとってのシーズンは、12月、クロアチアで行われるプレシーズンチーム合宿で始まる。

“It feels a bit like going to the velodrome back in the day. It’s full of brainy people who want to get the best out of themselves. It’s all about performance and how to unlock it. It’s left me super-motivated. But I absolutely don’t want to walk in and say, ‘This is how you do it’. I want to build the culture over the next 12-18 months.”

拙訳:(イギリスで選手育成を担っていた)ヴェロドロームに向かう感じと似ている。そこには自分たちのベストを尽くしたい聡明な人がたくさんいる。全てはパフォーマンスと、それをどう開放させるかだ。私はモチベーションに満ちあふれている。でも絶対に「これはこうやるんだ」と講釈を垂れるような真似はしたくない。次の12-18ヶ月でカルチャーを作りたいと思っている。

カンスタンティン・シフトソフやクリスチャン・コーレンドーピング騒動とそれに伴う解雇、先述した主力選手の離脱が相次ぐこのチームには、確かにカルチャーの構築が必至だ。

最後に

気になる(?)お給料の話が一度も出なかったことがやや不満かもしれませんが、ちょっと情報見つかりませんでした。

来年、そして数年先のバーレーン・メリダはどう変わっていくのか。今から楽しみです。

参考ソース

 

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