世界一の金持ちチーム、イネオス(旧スカイ)の懐事情を徹底調査。
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スカイ/イネオスの資金力が圧倒的とはしきりに言われるけど、実際のデータを見たことがない、と思ったので調べました。どれだけのお金をどこからもらって、何に使っているのか?不定期連載「Sky/INEOS解体新書」、今回は世界一の金持ちチーム、スカイ/イネオスの懐事情を徹底調査します。

そもそもワールドツアーチームの懐事情は?

ワールドツアーチームの年間予算はだいたい2000万ユーロ(25億円)くらいです。実際はもっとばらつきがあって、500万〜3000万ユーロ(6億〜40億円)程度ですが、スカイ/イネオスは更に上を行く50億円。他チームの2倍、場合によっては10倍近くの資金力を誇ります。そして、基本的に各チームとも収支トントンもしくは赤字です。では具体的にみていきましょう。

予算(収入)の8割はスポンサーから

ほとんどスポンサー収入です。

  • 主要スポンサー:1200万ユーロ(15億円)
  • 他スポンサー:400万ユーロ(5億円)
  • レース出場フィー:400万ユーロ(5億円)

レース賞金についてはチームではなく、選手に直接渡されることになっているので計上されていません。ただし、レースを勝った選手が全て貰うのではなく、賞金はチーム内でプールされ、シーズン終わりにそのレースに出場したチームメイトで山分けするという形になります。また、賞金の15%程度はスタッフにも配分されます。

支出の8割は選手とスタッフへの給料

2000万ユーロのうち、8割近くは人件費です。選手のお給料、スタッフのお給料、それらを支払ってしまうと全てが飛んでいきます。

  • 選手のお給料:1200万ユーロ(15億円)
  • スタッフのお給料:300万ユーロ(5億円)
  • Infrastructure(インフラ)費用:300万ユーロ(5億円)
  • その他:200万ユーロ(3億円)

※このうちInfrastructure(インフラ)費用が何をさすかというと…

  • 旅費:150万ユーロ(2.5億円)
  • PR&広報:75万ユーロ(1.2億円)
  • 資機材保管庫維持費:30万ユーロ(5000万円)
  • チームバス・チームカー維持費:30万ユーロ(5000万円)
  • その他機材(スポンサー以外のものを使う場合に発生):15万ユーロ(2500万円)

自転車レースは世界中で行われるようになってますから、旅費も多めです。

年々増え続けるスカイ/イネオスの予算は50億円超え

では、スカイの実際の予実績をみてみましょう。2010年から増え続けるスカイの予算は設立当初の2倍以上になっています。

毎年9月くらいに発表されるのがスカイの決算(companieshouse.gov.uk)。イギリスの法律で公開が義務付けられており、他のチームは公開する必要がないことを考えると貴重な資料です。まだ2017年のデータまでしかわかりませんので、チェックしてみると…収入34,496,000ポンド(50億円)、支出34,457,000ポンド(50億円)で、年間通して39,000ポンド(570万円)の薄利を出しています。収支トントンという理解で良いでしょう。

Skyと21Century Foxからのスポンサー収入だけで37億円

  • 主要スポンサー:2500万ポンド(37億円)
  • その他スポンサーおよびレース出場フィーなど:700万ポンド(10億円)
  • Value in Kind:250万ポンド(3億円)

主要スポンサーはSkyと21 Century Fox。37億円のうち、Skyが85%、21 Century Foxが15%を支払っています。その他スポンサーはピナレロ、カステリ、フォード、Kaskなど。資機材を提供するだけでなく、使ってもらうために資金も用意しているみたいです。レース出場フィーと合わせて10億円ほど。Value in Kindというのは、いわゆる現物支給のことなので、チームカーとか自転車とかその他もろもろの品々と予想されます。

スタッフへのお給料などで5億円。選手へのお給料は…?

  • 選手へのお給料:?(20億円くらい?)
  • スタッフへのお給料、社会保障、年金:340万ポンド(5億円)
  • 特別支出:280万ポンド(4億円)
  • その他:?

平均して44人/月のスタッフがいたそうですから、スタッフの平均賃金は1000万円程度かと推測されます。選手のお給料は公開されていないので謎です…といっても推測くらいはできそうです。一般的にプロツアーチームがスタッフ賃金の4倍程度の賃金を選手用として予算として確保してるとすると(前述)、全部で20億円が約30人の選手に分配されているということになり、そのうち6億がフルームと言われていますから、フルーム以外の平均をとっても5000万円くらいになりそうです。

サッカークラブとの比較

特性の異なるサッカーと自転車を比べて優劣を決めることはナンセンスな感じがしますが、あくまで規模感を実感するために、サッカークラブの予算を例示しておきます。マンチェスター・ユナイテッドの収入はヨーロッパ一番の917億円(参考)。スカイ/イネオスの18倍のスケールです。ヨーロッパの各リーグのクラブは放映権収入で潤っていますが、その一方、高騰した移籍金や年俸によって結局クラブは厳しい状況に追いやられてもいます。Jリーグでいうと、浦和は79億円、神戸や鹿島・川崎といったビッグクラブは50億円(参考)と、だいたいスカイ/イネオスと同じくらいのスケールです。なおJリーグのクラブは放映権収入がヨーロッパほど多くないのでカツカツですが、昨年はDAZNの参入で放映権収入が増加したそうです。

 

参考ソース

 

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