【スカイ解体新書】チームスカイが自転車界に残した足跡を振り返る。
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2019年限りでのスポンサー撤退がすでに決まっているスカイ。スカイの躍進は、ブレイルスフォードを始めとするイギリスの自転車関係者が国をあげて取り組んだ成果だと言われています。今でもイギリスは、ピッドコックなど将来有望な選手をうみだしつづけていると以前の記事でも紹介しましたが、もうちょっと時間をさかのぼって調べてみることにしました。第1弾は、チーム・スカイの足跡を振り返ります。

スカイ誕生の鼓動(2009)

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北京五輪で成功を収めたイギリスナショナルチームとスカイとの最初の契約は、2008年にトラックチームへの100万ポンドのスポンサー契約を結んだ時点にさかのぼります。スカイのチェアマン、ジェームス・マードックはマンチェスターにあるナショナルチームのヴェロドロームを実際に訪問してこの世界に魅せられたようです。

その年の夏、ブレイルスフォードや”ミスター・プロローグ”クリス・ボードマン等のロビー活動がみのり、スカイは彼らが構想するロードレースチームと5年間のスポンサー契約を結ぶことに同意しました。交わした約束はあの有名な「ツール・ド・フランスに5年以内に勝つ」。公にスカイのチームコンセプトが最初に発表されたのは2009年2月。「イギリス人による、イギリス人のためのチーム」として、まずはじめに確定した6名のライダーは、すべてイギリス人選手でした。

  • ゲラント・トーマス
  • スティーブ・カミングス
  • クリス・フルーム
  • ラッセル・ダウニング
  • イアン・スタナード
  • ピーター・ケノー

その後、リストにはイギリスに限らず世界中の選手たちが名を重ねていきます。

  • ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
  • トーマス・ロブクウィスト(フィンランド)
  • サイモン・ゲランス(オーストラリア)
  • ファン・アントニオ・フレチャ(スペイン)
  • ブラッドリー・ウィギンス(イギリス)
  • ベン・スウィフト(イギリス)

…などなど。

ベールを脱いだスカイ軍団。ワイルドカードでツール初出場(2010)

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スカイの一年目は、今では考えられないほど地味なものでした。ウィギンスによるジロのプロローグ優勝以外は、小さな勝利ばかり。ロブクウィストがツールのリーダーを努め17位。ウィギンスは23位。ロブクウィストを再度エースに据えたヴェルタではマッサーの急死により第7ステージでレースを去る決断を下しています。

急成長の一年。フルームとウィギンスがヴェルタで総合2位&3位に(2011)

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2年目にしてウィギンスがステージレーサーとしての才能を開花させ、クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝。ツールでは落車でチャンスを不意にしたものの、続くヴェルタでは総合3位となり、来シーズンへの期待が膨らみました。また、ここでフルームがエースであるウィギンスを上回る驚きの総合2位。2人の活躍により、チームスカイの存在感がぐっと増したシーズンとなりました。

イギリス自転車競技の歴史を変えた。ウィギンスのツール総合優勝(2012)

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そして3年目の2012年、スカイはイギリスの自転車競技の歴史を変える偉業を成し遂げます。パリ〜ニース、ツール・ド・ロマンディ、クリテリウム・デュ・ドーフィネとシーズン序盤から中規模ステージレースで総合優勝を続けたウィギンスがツールでイギリス人として初の総合優勝を遂げたのです。また、ストーブリーグではオーストラリアの新星、リッチー・ポートに加え、イギリスのエーススプリンター、カヴェンディッシュを獲得。グランツール以外でも勝利を量産します。

ウィギンス超えの逸材。フルームが驚異のツール圧勝(2013)

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前年のツールでウィギンスのアシストをしながらも2位に食い込んだフルームがエースを努め、キンタナとホアキンロドリゲスという稀代のクライマーを破ってツール総合優勝。ウィギンスはジロでエースを務めますがいいところなく途中リタイアに終わりました。カヴェンディッシュがチームを去ったものの、ダヴィロペスやキリエンカを新たに獲得したスカイは安定した強さをシーズンを通して発揮します。

失速のシーズン。フルームまさかの落車とウィギンス意地のアルカンシェル(2014)

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リッチー・ポートがジロでエースを務める予定が、体調不良によりDNS。ツールではフルームが第4Sに落車で早々にリタイア、コンディションが上がりきっていないポートが代わりにエースを担いますが、大ブレーキでタイムを失い、結局エウスカルテルから移籍してきたニエベの総合17位がスカイにとっての最高順位となりました。落車の怪我から復帰したフルームはヴェルタに出場しますが、コンタドールに破れ2位となります。

フルーム2度目の勝利。いぶし銀キリエンカのアルカンシェル(2015)

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フルームが前年の悔しさを晴らす自身2度目のツール総合優勝。さらに、強力なアシストとしてフルームを支えていたキリエンカが涙の世界選手権TT優勝を果たし、スカイの選手層の厚さを証明しました。この年のパリ・ルーベを最後にロードレースからの引退を表明したウィギンスは自らが立ち上げたUCIコンチネンタルチーム、チーム・ウィギンスへと籍を移しトラックに専念、リッチー・ポートはBMCへの移籍を決めます。

サガン永遠のライバル、クウィアトコフスキーが加入。フルームがツール3勝目(2016)

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新陳代謝が進むスカイですが、潤沢な資金を武器に補強を加速させます。すでに世界選手権優勝を始めとする勝利を量産していたクウィアトコフスキーが加入。早速E3を制します。ツールではフルームが危なげないレースで自身3勝目をマーク。

モニュメント初制覇。フルームがツールとヴェルタのダブルツールを達成(2017)

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ワンデーレースの中でも最も格式高い”モニュメント”と呼ばれるレースの一つ、ミラノ〜サンレモ。クウィアトコウスキーが、サガンとアラフィリップとの三つ巴の戦いを制します。これがスカイにとっては初のモニュメント制覇でした。またグランツールでは、衰えることを知らないフルームがツールとヴェルタを両者とも圧勝。自らの強さを世界に示します。

フルームのジロ大逆転勝利とGのツール勝利。新星ベルナルの飛躍(2018)

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新加入のコロンビアン、エガン・ベルナルがツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝など大車輪の活躍をみせ、チーム・スカイ次世代エースに名乗りを上げます。一方で大エースであるフルームはジロを最終盤での大逆転で総合優勝、更に、フルームをも抑えたゲラント・トーマスがツールで初の総合優勝と、「フルームだけじゃない」スカイを再度体現するシーズンとなりました。

スカイ時代の終焉?(2019)

経営陣の変更により、スカイが2019年限りでのスポンサー撤退を決定しました。それでもスカイは、個人追い抜きの若き世界王者フィリッポ・ガンナ(イタリア、22)やベルナルの同胞ソーサ(コロンビア、21)など有望な若手と新たに契約を結んでいます。自転車競技を変えたチームは、同じくらい潤沢な資金を用意できるスポンサー探しに奔走中。果たして次期スポンサーはどうなるのか、注目が集まります。

スカイの基本理念

初期メンバーであるブラッドリー・ウィギンス、クリス・フルーム、ゲラント・トーマスという生え抜きの3大スターが活躍していることが「才能ある選手をもれなく発掘して、正しく育成する」という基本理念という礎がいかに大事であるかを物語っているでしょう。才能の発掘という初期段階での成功に加えて、潤沢な資金をいかした大型補強を続けているわけですから、強いわけなのです。

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