今まで読んできた自転車選手についての本についてまとめてみました。全部紹介しようとも思ったのですが、思ったより全然たくさん読んでたので12冊に絞ってみました。各選手の人生やドラマなどにフォーカスしたものばかりをピックアップしているので、トレーニング関連の本は入ってません。
私はどんぴしゃランス・アームストロング世代。子供の頃見たツール・ド・フランスではランスが活躍していて憧れていたので、ドーピング騒動は相当ショックだった覚えがあります。ただ、最近思うのは「それも含めてなんかドラマチックだなロードレース」ということです。
ミゲル・インデュライン(1996)
クリスティアン・ラボルド (著), 三田 文英 (翻訳)
「ミゲルは妖精を追って森に入っていった」みたいな記載があって、かなりポエム的な要素が強いですがランス以前に一時代を築いた男のドラマを読んで見たい方にはぜひおすすめです。
ツール・ド・フランス物語(1997)
デイヴィッド・ウォルシュ (著), 三田 文英 (翻訳)
ツールに出ているのはエースだけでも、選手だけでもありません。新人、ボス、スプリンター、勝者、ジャーナリスト、アシスト選手、監督、クライマー、リタイヤ選手、ドクター、最下位選手、妻、チャンピオン…。それぞれからのツール・ド・フランスとは。
普段スポットライトを浴びない関係者たちにも焦点をあてた名作。小学校のときにこの本の読書感想文を書いて「目の付け所がいいね!」と褒められましたが、目の付け所が良いのは小学生の私ではなく著者であることは言うまでもありません。
ヤン・ウルリッヒ―僕のツール日記1997(1998)
J・ウルリッヒ (著), H・ボスドルフ (著), 吉田 量彦 (翻訳)
1997年に弱冠23際にしてツール・ド・フランスを制し、その後はランス・アームストロングの後塵を拝し続けたかつての「若き天才」がお付きのジャーナリストに毎日語った言葉を文字に起こしたのが本作。薬物とアルコール依存に苦しんでいるウルリッヒさんはもう44歳。時が経つのは早いものです。
ときどき本当にこう考えたんだ。僕はただ映画館に坐って、スクリーンの中の自分の姿を眺めているだけなんじゃないか、幕が下りると、全ては跡形もないんじゃないか、って
ヤン・ウルリッヒ―僕のツール日記1997
ツールへの道 (2000)
今中 大介 (著)
日本人として初めてツール出場を果たした今中大介氏の日記ベースの自伝。シマノの後押しでトッププロチームに入ったことに対する危機感と無我夢中の努力。ヨーロッパレースシーンを開拓した第一人者が語る悲喜こもごもは一読の価値あり。
ゴールに集まった観客でごった返す中をチームカーへと進んでいくと、ポルティのチームカーに監督のスタンガがいて、こちらを見ると優しい目をして手を広げた。ゴールにたどり着いた時にはタイムオーバーの悔しさで頭がカッとしていたのに、彼やルブランに「ここまでよく走った!」と言われた途端、思わず涙がこぼれそうになった。
ツールへの道 今中大介
ただマイヨ・ジョーヌのためでなく(2000)
ランス・アームストロング (著), 安次嶺 佳子 (翻訳)
この本についても小学校の夏休みの読書感想文で絶賛した覚えがあります。
『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』をきっかけに私はロードレースという競技にさらにのめり込み、『シークレット・レース』をきっかけに世の中を斜めから見るようになりました。何にせよ、ランス・アームストロングは良くも悪くも私の人生に大きな影響を与えた人物であることは間違いありません。アンチにもファンにも、アームストロング最強時代を知らない人にも一度は読んでほしいのがこの本。
ツール100話―ツール・ド・フランス100年の歴史(2003)
安家 達也 (著)
100年以上の歴史を持つその発祥と発展の全貌を、100の小話を集大成して明らかにした一冊。日本人の安家達也氏によるもの。
ツール・ド・フランスの始まりが2つのスポーツ新聞の熾烈な読者獲得合戦から生まれたというのはよく知られている。しかしもう少しさかのぼってみよう。するとこれが予期せず「ベル・エポック」のフランス最大の政治事件と大きく関わっていることがわかるのである。
ツール100話―ツール・ド・フランス100年の歴史
シークレット・レース (2013)
タイラー ハミルトン (著), ダニエル コイル (著), 児島 修 (翻訳)
自転車界全体がランスのドーピング騒ぎで大きく揺れたのが2010年代前半。その極めつけがタイラー・ハミルトンによる暴露本「シークレット・レース」です。当時は衝撃の内容でした。
Mastermind: How Dave Brailsford Reinvented the Wheel(2013)
Richard Moore (著)
「最強軍団」チーム・スカイをいちから築き上げた男、ブライルスフォードを追ったドキュメンタリー。割とすぐ読めるので英語の本を読んだことがない人にもおすすめです。
“We’re very big on attitude/behaviour,” he says. “I prefer to hire somebody with the right attitude and behaviour, who might be limited in their knowledge and their skills, as long as they’ve got the head room [or potential] to improve in these areas.
(「私達は態度と行動をものすごく重視している」と彼は語る。「私は正しい姿勢で正しい行動ができる人材を採用する。知識やスキルが不足していようとも、そこに伸び代があるのなら問題はない」)
Mastermind: How Dave Brailsford Reinvented the Wheel
敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース(2014)
土井 雪広 (著)
フミとのジュニア時代から今まで続く関係についてのエピソード、プロトン内にはびこる「錠剤」の話など、赤裸々に自身のプロ生活とプロロードレース界について綴った渾身の一作。
僕はロードレースを愛し、プロとして一緒に生活するまでになった。10年以上に渡って、24時間、365日一緒だ。だから当然、綺麗じゃないものもたくさん見てきた。でも僕は、ロードレースという、自分が心から愛するものをみんなにもっと知ってもらいたい。だから、綺麗ごとだけじゃない、その先にあるリアルなものを伝えたかった。
僕はちょっと喋りすぎただろうか。それでもいい。
敗北のない競技 土井雪広
The Climb(2015)
Chris Froome (著)
王者フルームのルーツとツール初優勝までを綴った自伝。アンチの人にこそ読んでほしい、フルームを応援したくなる一冊。
My World(2019)
Peter Sagan (著)
人気者サガンがらしさを全開に綴った自伝。その美学に男女問わず惚れること間違いなし。スロバキアという決して自転車競技が強いとは言えない国から突如生まれた稀代のスター。日本からも、サガンみたいな突然変異が生まれてくる日を私はいつまでも夢見ています。
The Tour According to G: My Journey to the Yellow Jersey(2019)
Geraint Thomas (著)
Gトーマスのキャリア、そして2018年のツール優勝までの軌跡を振り返る、G節がところどころで炸裂する読み応えのある一冊です。