【映える】ひときわ美しく目立って見えるさま、他と比べても特に際立っているさま、周囲から引き立つように見栄え(見映え)がするさま、などを指す意味で用いられる表現。2010年代後半現在では、Instagram(インスタグラム)をはじめとするソーシャルメディアへの投稿にうってつけの素晴らしい被写体、その意味で撮影し甲斐のある被写体、あるいは、被写体がインスタ上でひときわ良く見えるような素晴らしい撮れ方・写り方、といった意味で「映える」の語が用いられている。
新たなロードレースシーズン開幕とともに、画面を彩るのはニューデザインのチームキット。デザインというのはロジックだと聞いたことがあります(ソースは忘却の彼方)が、本記事ではどちらかといえば悪名高い帰納的推論でありつつも、厳密には演繹的でも帰納的でもない似非推理を展開します。つまり、ソースを提示するのも面倒くさがってしまう素人による考察の体をした独り言なのであります。
各人によって感想は大きくことなるのは当たり前として、大まかに言ってキャニオンスラムやエフデジ女子チームのニューキットの評判が良い一方で、バイクエクスチェンジの新しいチームキットの評判があまりよろしくなさそうである、というトレンドを見たのが本記事をあげたきっかけですなのですが、「デザインそのものがおかしいわけではなくて、変わりすぎると違和感を覚えてしまうだけである」というのが私の仮説です。本記事ではこの仮説をサポートしてくれそうな逸話を紹介します。エビデンスではありません。また、この仮説を否定する逸話も取り扱わないのですが、これは脇道に逸れないためだけであって、こじつけではございません()。
ことジャージデザインにおいて、人々は大きな変化を好まないようである
さて本文をはじめるにあたっての前提として、私は美的鈍感人間です。普段の生活ではデザインがよくない!どころか、これがいい!とすら感じることがあまりありません。例えばバイクエクスチェンジのジャージをみてコメントせよ、という問いを投げかけられたとしても、あおい!という感想しか述べられないでしょう。
普段であれば状況に合わせて適当に発言して自分が何を言ったかも忘れてしまうのですが、今回の場合は話をする相手がいるわけでもないので、さてはて、なぜこのデザインがこんなに評判が悪いのだろう?ときわめてニュートラルに思ったのです。さらにどうにもほかに考えることもなかったので、いくつか仮説を並べてみてみたというわけです。青と赤のバランスや組み合わせが少し変なのだろうか?とか、青や水色といったシンプルな色が子供っぽいのだろうか?とか、偉い人がこんなのだめだとでも言ったのだろうか?とか。
様々な仮説の中で一番しっくり来たのが、前とイメージが変わりすぎただけでは?というものでした。理由なんてあとから考えようという自分勝手な心もちで、それっぽい前例をならべてみます。だってほら、前もそんなことがあった気がするじゃないか、と。似非帰納法の出番です。例えば、去年のAG2Rのウェア刷新。シトロエン加入に際し、文字がデカデカとプリントされたジャージデザインにおどろくひと続出。何年前か忘れましたが、それ以前のAG2Rのウェア刷新。青黄という原色から、突然茶色と水色というセピア調にイメージ刷新におどろくひと続出。。。。。あまり思いつかなかったので、バイクエクスチェンジの青ジャージのお話に戻ります。
オーストラリアのロードレーサーたちの欧州進出に大きく貢献してきたこのチームは、今までは「緑」がチームカラーでした。2012年にオリカ・グリーンエッジとして発足して以来、ミッチェルトンになっても、スコットになっても。バイクエクスチェンジとなった時点で白黒基調+チェレステカラーとなったものの、チェレステも緑っぽいと言えば緑っぽいですし。そして迎えた今年、大きく水色にシフトチェンジしたことで、その唐突感から、おうまいがあ、となってしまったのではないか。
よくできた仮説だと思うのですがどうでしょう。
かといって、変わらなかったり他と被ったりすることもあまり好まないようである
じゃあずっと同じデザインでいいのではないか、とも思うのですが、デザイン変わってないやんけ、というのもあまり評判がよろしくないようです。さらに10年くらい経つと、なんだか古いという印象をもたれてしまう。言わずもがなデザインは変わっていないのですから、このケースにおいて変わってしまったのは価値観や環境です。
また、ジャージにまつわる語りつくされたトピックとして、色とデザイン被ってる問題というのもあります。XXX系の色が多くて見分けがつかないやんけ!というやつで、デザインというのは機能面も重視されて然るべきですから、見分けがつかないというのはタイヘン困るのです。今シーズンのニューキットでは女子チームで特に顕在化。シュレックチーム、SDワークス、UAEエミレーツ、ヒューマンヘルスパワー。。シュレックチームは不公平感のあるジャッジでUCIからデザイン変更を命じられました。
さてどこかで見たことのある色合い。黄色と紫と淡い赤のグラデーション…。そう、インスタグラムですね。
インスタと聞いて思い出したことなど
そういえばインスタのロゴデザイン変更の際も話題になっていた気がする、とそんなことを思い出しネット上をサーフィンしてみると、やはり出てきました。茶色っぽいカメラを模した3Dアイコンから、当時流行が始まっていたフラット×グラデーションのアイコンへ変更したのが2016年のこと。評判は散々だったそうです。お金かけてこれ?とか、こんなグラデーションなんて無料ソフト使って10秒でできる!とか、アイデンティティを失った!とか。
そんな悪評高かったインスタのグラデーション。今ではこぞって各チームがインスピレーションを受けてウェアをデザインしているわけですから、味わい深いモノです。やっとこさ前述の仮説をサポートしてくれそうな逸話がでてきましたね。難産でした。
わかりやすく、ちょっとだけ変える。ということ
ではどんなデザイン変更だと評判が良くなるのか。それはちょっとだけ、かつ、わかりやすく変わった場合です。
AとBという全く異なる特性をもつ選択肢があって、もともと半々くらいの支持率だったとしましょう。そこに第3の選択肢としてBと似ているが少しだけBに優るB'(ビーダッシュ)という選択肢が追加された場合、人という生き物はこぞってAではなくB'を選んでしまうという話を聞いたことがあります。ちょっと強すぎるかもよビーダッシュなのです。ソースはすごい大学の偉い学者さん。たとえばクイックステップやボーラなんかはワンポイント新しいロゴや色が入るという「わかりやすい」かつ「ちょっとした」変更。
「わかりやすく」「ちょっとだけ」というのは一見つまらなくも感じますが、攻めたアプローチも可能です。エフデジの女子チームも、大きく色の配置こそ変えてはいるものの、青・白・赤のトリコロールという絶対的アイデンティティをわかりやすく留めたということが高評価の秘訣だったのではないか。キャニオンスラムも然り。そう思うのです。昨年のEFのツールやジロのスぺシャルジャージもかなり大きな変更でしたが、ヴィヴィッドなカラーという圧倒的個性を留めています。もともとヴォーターズのチームはスリップストリームの流れをついでおり、カラーが大きく変わってもアーガイル柄を残し、ピンクという刺激的な色が入る際には緑も残し(この過渡期は若干評判悪かったような記憶)、最後にまっピンクになる。という段階的な変化を見せています。つまりちょっとずつなのに大胆に、継続的に変えているのです。
考えたのではなくて、なんとなく思っただけなのですが
結局のところ、いわゆる「ださっ」と言う一見攻撃的なセリフは、熱々のお風呂に入ったときの「あっつ」だったり、お腹がすいたときの「はらへった」だったり、とりあえずの「かわいい」だったりといった、いわば外部環境の変化に適応するために内部から発せられるきわめて予定調和的もしくは条件反射的なセリフなのではないかと思うのです。
1年ぶりのThinkカテゴリー記事ですが、It seems likeくらいのきわめて軽い気持ちで、あたかも難しいことを考えているかのようにわかりづらく書いてみました。そんなこんなで今日も世界はカラフルで、大して役に立たない考え事ができるくらいには平和なのでございます。今年も主観と客観のあいだをさまよいながら情報発信していきたいと思いますので、なにとぞよろしくお願いいたします。
たぶん参考にしたソース
- ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質|ナシーム・ニコラス・タレブ
- 予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」|ダン・アリエリー
- Instagram drama proves just how much we don't like change|CNN health
- Which WorldTour team has the best kit for 2022? We take a look through the wardrobe|Cycling Weekly
- 11 alternative kits with more flair than (most of) the WorldTour would know what to do with|Cycling Weekly
- 2022 WorldTour team kits: The definitive ranking|Cyclingnews
- 2022 Pro team kits – the best of the rest|Cyclingnews
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