UCIの『2020年改革』とは?NIPPO・ヴィーニファンティーニの運営会社解散のきっかけとなった改革はロードレースをどう変えるのか。
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ツール期間中にフワッと出てきてなんとなくおざなりになった話題「NIPPO・ヴィーニファンティーニを運営するフランチェスコ・ペロージGMの会社「STC PRO Srl」の解散に伴うチーム活動の停止」に絡めて、UCI(国際自転車競技連合)の2020年改革についてまとめよう、というのが今回の記事です。

 解散の理由についてチームマネージャーのフランチェスコ・ペロージは、「UCI (国際自転車競技連合)が進める『2020年改革』に向けて、プロフェッショナルチームは(グランツールに参加できる)より少ない保証にもかかわらず、これまで以上に高額な予算が必要となります。 選手やスタッフの増加、そしておそらく有料となるであろうUCIプロシリーズレースへのアクセスをカバーするために、我々はチームの年間予算として280万ユーロ~450万ユーロを確保しなければならないことになります。 これでは活動を継続することができません」と語った。

たまに「改悪だ!」という話は小耳に入ってきても、実際に何がどう変わるのか?なんで変わるのか?について議論されることは少なくて(そんななか大門監督のインタビュー記事は勉強になります)、結局2020年の1月からはじまる新制度とはどんなものなのか?っていうポイントがすっぽり抜けちゃってることは多いのでまとめてみました。

変化1:レースのカテゴリーが変わる。

UCI公式プレスリリースより

 

現在UCIが定めているロードレースのグレードは、下から『2』、『1』、『HC』、『ワールド・ツアー』 という4段階となっていて、例えば、日本の主だったレースは以下のようなカテゴリーとなります。

ワールド・ツアー
○該当レースなし
HCクラス
○ジャパンカップ
1クラス
○ツアー・オブ・ジャパン
2クラス
○ツール・ド・熊野
○ツール・ド・北海道
○ツール・ド・おきなわ

これが今回は3つにまとまって、①UCIワールドツアー、②UCIプロシリーズ、③UCIコンチネンタルサーキットになります。

①UCIワールドツアー

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まず、ジロ、ツール、ヴェルタの3大ツールはトップのカテゴリーに入ります。

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また、UCIクラッシクシリーズとして、モニュメントを始めとする格式高いワンデーレースもトップのカテゴリーに入ります。

※追記:UCIクラシックシリーズについては導入延期(公式リリース)。

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最後に、それ以外のワールドツアーレベルのレース(ステージレース、ワンデーレースどちらも含む)もこのカテゴリーに入ります。なぜ同じカテゴリーなのに3つに別れているかというと、それぞれで出場チームや人数が異なってくるからです。これについては記事後半で。実はワールドツアーに関してはすでにUCIが2020年のカレンダーを公表しており、37レース14ヶ国4大陸で行われる予定ですが、トルコで行われていたツアー・オブ・ターキーが除外された以外は大きな変化はありません。

②UCIプロシリーズ

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現在のクラス1・HCから、選ばれしレースたちがここに入ってきます。ツアー・オブ・ジャパンは現在1クラスですが、来年からはどうなるのでしょうか。

※追記:コンチネンタル・サーキット(アジアツアー)のクラス1としてカテゴライズされた模様。

③UCIコンチネンタル・サーキット

今まででいう2クラスのレース(ツール・ド・熊野など)を中心に、各レースが大陸ごとにカテゴライズされることとなります。

変化2:チームのタイプが変わる。

UCI公式プレスリリースより

 

2020年から変わるポイント2つめは、チームのタイプとその制約。

①UCIワールドチーム

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例)INEOS、ドゥクーニンク・クイックステップなど。

全18チーム(現状と同じ)からなり、選手の数は27-30人。付与されるライセンスの有効期間は3年間。毎年資格審査が課されて昇格・降格があり得ます。

②UCIプロチーム(現在のUCIプロコンチネンタルチーム)

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例)アンドローニ・ジョカトーレ、ワンティ、コフィディスなど。

チーム数に制限はなし。選手の数は20-30人。現在25あるUCIプロコンチネンタルチームは最低人数が16人でしたから、1チームあたりの人数が多くなることになります。

③UCIコンチネンタルチーム

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例)UKYO、マトリックス、インタープロなど。

同じくチーム数に制限はなし。選手の数は10-16人。現在、世界中に172のチームがあります。そのうち日本国籍のチームは9つで全体数172のうち5%くらいですから、意外と多いなという印象です。

どのチームがUCIワールドツアーに出れるの?

スポンサーにとって何より大事なのが「できるだけでっかい(注目度が高い)レース」に出場できること。では、どのチームがどのレースに出れるのか?出なきゃいけないのか?が気になるところですね。

Grand Tours(ジロ、ツール、ヴェルタ)

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1チーム8人で、22チームが出場予定

18のUCIワールドチーム(マスト)

+2のUCIプロチーム(前期のランキング上位の2つ。辞退された場合には違うチームを招待)

+2のUCIプロチーム(いわゆるワイルドカード。もし上記のプロチームが辞退すればここの数が増える)

例えば今年のツールは18のUCIワールドチームが自動的に、そして4のプロコンチネンタルチームがワイルドカードで出場しました。ただ、ツールの場合は今年ワンティとコフィディスというヨーロッパ・ツアーのランキング1位と2位が選ばれており、実情としても来年からの選出基準に沿った形に。

UCI Classics Series(パリ~ルーベなど)

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1チーム7人で、21〜25チームが出場予定

18のUCIワールドチーム(必ず出場もしくは必ず招待。どちらとなるかは、現状による)

+3のUCIプロチーム(前期トップ3チームを必ず招待。必ず出場、とはなっていないから辞退可能のはず)

+0-4のUCIプロチーム(主催者選定によるワイルドカード)

現状としては、例えばパリ〜ルーベは全18のワールドツアーチームに加えてワイルドカード枠は以下の7つ。

  1. Cofidis(フランス)
  2. Team Delko Marseille Provence(フランス)
  3. Team Direct Energie(フランス)
  4. Team Arkéa Samsic(フランス)
  5. VITAL CONCEPT – B&B HOTELS(フランス)
  6. Roompot – Charles Cycling Team(オランダ)
  7. Wanty-Gobert Cycling Team(ベルギー)

もし前年チームランキング上位3つが出場ということになれば、イタリアのアンドローニ・ジョカトーレも出ることとなります。なお辞退可能なので、出場しなくても大丈夫です。

※追記:UCIクラシックシリーズについては導入延期(公式リリース)。

その他のUCIワールドツアー・ステージレース(パリ~ニースなど)

1チーム7人で、20〜25チームが出場予定

18のUCIワールドチーム(必ず出場もしくは必ず招待。どちらとなるかは、現状による)

+2のUCIプロチーム(前期トップ3チームを必ず招待。必ず出場、とはなっていないから辞退可能のはず)

+0-5のUCIプロチーム(主催者選定によるワイルドカード)

現状だと例えばパリ〜ニースの出場チームはUCIプロツアーの18チームに加えてアルケア、コフィディス、ディレクトエナジー、ヴィタルコンセプト、デルコマルセイユの5チームで全部がフランス。

その他のUCIワールドツアー・ワンデーレース(ライドロンドンなど)

UCI Classic Seriesと全く同じ基準です。

1チーム7人で、21〜25チームが出場予定

18のUCIワールドチーム(必ず出場もしくは必ず招待。どちらとなるかは、現状による)

+3のUCIプロチーム(前期トップ3チームを必ず招待。必ず出場、とはなっていないから辞退可能のはず)

+0-4のUCIプロチーム(主催者選定によるワイルドカード)

現状だと、例えばライドロンドンの出場チームは

16のワールドツアーチーム(カチューシャ、ボーラ、バーレーン・メリダ、ロットエネルユンボ、AG2R、UAE、アスタナ、BMC、EF、ロットスーダル、ミッチェルトン、ディメンションデータ、サンウェブ、スカイ、クイックステップ、トレック)

+4のプロコンチネンタルチーム(Sport Vlaanderen、CCC、バルディアーニCSF、ノヴォノルディスク)

となっており、ワールドツアーチームのモビスターとグルパマFDJは出ていません。2020バージョンだと「必ず出場」ではなく「必ず招待」レベルの大会にカテゴライズされるのでしょう。

変化3:ランキングが変わる。

UCI公式プレスリリースより

 

このランキング制度は2019年からすでに運用開始済みです。UCIワールドツアーランキング(ワールドツアーだけを対象としたランキング)が廃止され、2016年に導入されたUCIワールドランキングが唯一の国際的ランキングになりました。現時点(2019/7/30)の個人ランキングは以下の通りで、チーム編、国篇が存在します。

  1. アラフィリップ
  2. バルベルデ
  3. フグルサング
  4. ピノ
  5. ログリッチェ
  6. ベルナル

大陸ごとにも同じく個人ランキング、チームランキング、国ランキングがあります。現時点でのアジアの個人ランキング1位は、アスタナのルツェンコ。増田、別府がそれぞれ5位、6位です。

ファンからみたら、選手からみたら、チーム運営からみたら、レース主催者からみたら、UCIからみたら、、、この変化は何をもたらすのか?について次回の記事では考えてみます。物事にはいろんな目線があって、それぞれに各々の思いがあり…。そんな思いを勝手に想像していこうかなと。

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