EFエデュケーションがワールドツアー「じゃない」レースに選手を送り込む理由とは
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今回紹介するのは、ワールドツアーチーム所属なのに、ワールドツアー「じゃない」レースを主戦場としている選手です。その名はEFエデュケーションのLachlan Morton(以下モートン)。2012年にガーミン・シャープでワールド・ツアーチームデビューをして以来、長きに渡って主にステージレースで活躍してきたオーストラリア出身の27歳。久しぶりにロードレースへ復帰したツアー・オブ・ユタではステージ優勝をあげています。

"It’s great to challenge yourself that way and just sort of being involved in cycling in a different discipline or a different type, it makes even coming back to a road race like this, it makes it more fun. I haven’t done a road tour since the Tour of California, so I’m definitely feeling fresh, I’ve never had as much fun racing my bike as I’ve had this year, this season, because I’ve been doing so many different things."

サイクリングと今までとは違った関わり方をして、チャレンジできたことはとてもいい経験になった。それにロードレースシーンにいい形で戻ってこれて、さらにワクワクしている。ツアー・オブ・カリフォルニアからずっとロードレースに出てなくて、フレッシュな状態だ。今年ほど色々なことをして、今年ほどレースを楽しいと感じたことはない。

新生EFエデュケーション。突然の発表にざわついた業界。

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EFエデュケーションといえば、ジョナサン・ヴォーターズ率いるアメリカのチーム。自転車界に新たな提言を積極的にしているラファが新しくスポンサーに加わり、PR活動も積極的になったイメージがあります。

今年1月、そんなチームから突然発表がありました。ラファとの提携にあたり「ワールドツアー以外」のレース、マウンテンバイクから数日に渡るウルトラ耐久イベントまで、にチーム所属選手を出場させることとしたのです。ワールドツアーレベルのビッグレースでの活躍、UCIポイントの獲得などが至上命題とされてきたプロツアーチームにとって、ざわつくのに十分なトピックでした。

参考:EF EDUCATION FIRST / RAPHA: ALTERNATIVE CALENDAR

具体的に、どんなレース?

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それでは、具体的にEFエデュケーションのどの選手が、どのようなレースに出場したのでしょうか?最も積極的に参加したのは前述のモートン。その他にも、アメリカ出身の31歳アレックス・ハウズ、そして同じくアメリカ出身でジロ・デ・イタリアのステージ勝利をあげたこともあるタイラー・フィニーがこのプログラムに参加しました。

ダーティー・カンザ(アメリカ, 6/1)

ここ最近注目度が急上昇しているグラベルバイク。そのグラベル愛好家たちにとって最高峰のレースがこのダーティー・カンザです。前述のモートンはツアー・オブ・カリフォルニアに出場したのち、このダーティー・カンザを皮切りにロードレース「じゃない」レースカレンダーに突入しました。走行距離200マイル(320km)、出場者数2000を超えるこのレースでモートンは10時間以上をかけて4位でフィニッシュ。

GBデュロ(イギリス, 6/22)

GBデュロは、4ステージ2000kmに渡るエンデュランスイベントで、イギリス全土を走り抜ける超耐久レース。モートンは111時間44分でこのレースを制しました。

Leadville Trail 100(アメリカ, 8/10)

かつて鉱山として開発されたエリアを160kmに渡って駆け巡るマウンテンバイクレース。獲得標高が3000mを超えるこのレースで、モートンは3位(6時間22分42秒)でフィニッシュしています。最高到達地点は12000フィート(約3650m)と、ほぼ富士山に匹敵する高度です。

Three Peaksシクロクロス(イギリス, 9/15)

9月にはイギリスで行われるThree Peaksシクロクロスは、距離こそ61kmであるものの、「絶対に乗ってクリアできない」6-8kmの区間など、その厳しさは折り紙付きです。世界で最も厳しいシクロクロスイベントとの声も。

台湾KOMチャレンジ(台湾, 10/25)

来る10月には、日本人にもおなじみのヒルクライムイベント台湾KOMチャレンジへの参戦を予定しています。海抜0mから100kmかけて標高3000mまで一気に駆け上る世界屈指のヒルクライムレースです。2017年にはあのニバリも出場して優勝しています。

なぜ、EFエデュケーションは「じゃない方」のレースを走るのか?

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建前としては、「自転車プロスポーツを変えたい」と謳うラファとEFエデュケーションではありますが、本音として「ホビーレーサーがたくさん出場するレースでのプレゼンスは、コアなカスタマーに対する絶好のPR機会であるから」という側面もあるでしょう。

実際、ワールドツアーを走る選手のフィジカルをもってすればこうしたレースに勝つことは難しいことではないと思います。ただ、そのための練習をどれだけするか、というのは難しいところです。ダーティ・カンザでEFのハウズ、モートンが3位、4位となったのに対して1位のコリン・ストリックランドはスポンサー等は付いいるもののあくまで個人ベースで活動している選手。驚きの結果として捉えられるむきもありましたが、モートンは以下のように語っています。

“You saw with Strickland that he was so well prepared and had a specific plan, and that it really helped him. At 10pm the night before, we were still getting tutorials on how to boot tyres and mucking about with tyre pressures. When we were riding with all these gravel specialists it definitely felt like we were riding with them, rather than they were riding with us.”

ストリックランドはしっかりした計画を立てて準備をしており、それが彼の成功の理由だ。僕らはレース前日の夜10時になった段階でまだタイヤの履かせ方について聞きまわったり、空気圧をいじくり回していた。グラベルレースのスペシャリストと走っていると、彼らが僕らと一緒に走るというよりも、僕らが彼らと一緒に走っているという感じがした。

言われてみれば当たり前ですが、専門的なトレーニングを積んでピーキングまで考えて調整してきたスペシャリストに、ポッと出のワールドツアーロードレーサーが勝つということは(フィジカル的には優れている可能性は高いとはいえ)難しいのです。またこのコメントからも推測されるように、EFは「勝つために」これらのレースを走っているわけではなくて、多くのアマチュアアスリートと共に過酷な体験を共有し、「より広い」自転車界でプレゼンスを高めるために走っているようなのです。人々の価値観がころころと変わっていくこの世の中で、モートンのコメントには考えさせられるものがあります。

“For me and I’m sure the team also, what we are trying to achieve by pushing ourselves in these races is greater than what we achieve through any WorldTour result. If that means less than ideal preparation for WorldTour events in certain instances, then so be it.”

僕にとってもチームにとっても、僕らがこうしたレースで成し遂げようとしていることはワールドツアーで結果を残すことよりも重要なことだ。もしそれがワールドツアーレースへの準備不足につながるのなら、それはそれでいいじゃないか。

最後に

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来年以降もこのプログラムを続けたいか?と聞かれたモートンはポジティブな回答を残しています。

"Yeah, absolutely. Hopefully this continues to grow. The idea is that hopefully, eventually, it’s not the alternative calendar, it’s just what the calendar is. Cycling is growing in so many different ways. It’s kind of narrow minded to think that road racing is always the pinnacle of the sport. I think that’s going to change."

もちろん。もっとこのプログラムが成長していくと良いと思っている。何が言いたいかというと、これは「じゃない方」のカレンダーじゃなくて、「あるべき姿」になると良いんじゃないかということだ。サイクリングは色々な形で進化し続けている。ロードレースがいつもサイクリングの頂点にあるなんていうのは視野が狭いんじゃないかな。きっと段々と変わってくると思うんだ。

EFエデュケーションは、ラファとキャノンデールという自転車界の中でもブランドづくり・話題づくりが上手な会社をスポンサーに持つチーム。その2社が知恵を絞って話題作りのために考え出したのかな?とかなんの根拠もなく思いもしていますが、話題になる取り組みをし続けるというのは「スポーツチームはエンタメの担い手である」という大原則を考えればとても真っ当な考え方。

スポンサーがつくのは「注目度・知名度やブランドイメージ向上」を目指すためですから、何かと保守的なロードレース界において、こうしたワクワクが伝わる彼らの仕事は、とっても意味のある取り組みです。そして何より「勝つことも大事だけど、新しい経験とそこから学ぶなにかも大事だよ」っていうメッセージにすごい共感を持たずにはいられません。

参考ソース

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