セシリーウトラップ・ルドヴィグ。この名前を聞いてピンと来たあなたは、きっと相当なロードレースマニアでしょう。でもこのインタビュー映像を見たら、ああこのインタビューの人か!と思い出す人はもっと沢山いるかもしれません。そうです、「2019年最もハッピーなインタビュー」として名高いあの彼女のことなのです。
「ハッピーな死んだ魚」インタビュー
?@CUttrupLudwig gives you insight in the #RVVWomen finale as only she can do. Sit back and enjoy ... #RVV19 #UCIWWT @BiglaTeam @UCI_WWT #onehappydeadfish pic.twitter.com/h8MzxjqHGw
— Ronde Van Vlaanderen (@RondeVlaanderen) April 7, 2019
文にするとこのキャラクターの感じが消えちゃいそうなんですが、端折っていうと「観客がめっちゃいて、みんなすごい応援してくれるからフルガスで勝負して超楽しかった!最後は死んだ魚みたいになったけどね!ハッピーな死んだ魚に(笑)」というようなことを言ってます。それで肝心のセシリーのリザルトはどうだったかというと、優勝でなくて3位。それなのにこのテンションだったから、世界のロードレースファンが「やっぱりロードレース最高!」といいねを連打したんですね。「彼女が出るレースではリザルト関係なくインタビューして!」と冗談交じりのリクエストがあったくらい。
スーパーのレジからロードレースの表舞台へ
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(2012年ジュニア世界選手権個人TTで2位)
そんなセシリーは、生まれも育ちもデンマークの24歳です。子供のころに水泳から転向して自転車に乗り始めた彼女は、週末にパーティーに行かずにシクロクロスのレースに出かけるちょっとクレイジーな女の子でした。ジュニア世界選手権個人TTで2位になるなど若いころから成績を残し、地元のデンマークチームに加入。
しかし、U23カテゴリーが殆どない女子レースの世界では、ジュニアの次はエリートです。マリアンヌ・フォスなど怪物級の選手が走る世界に突如放り込まれたセシリーは、当然のことながらしばらくリザルトを残せずに苦しみます。しかもその時には給料がもらえなかったので、スーパーのレジ打ちをしながらやりくりする生活。
飛躍の2017年「いきなり私はリーダーになった」
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(2017ジロローザで新人賞獲得)
そんな彼女に転機がおとずれたのはエリートカテゴリーで走りはじめて4年目、Cervelo-Biglaで迎えた2017年のことでした。ストラーデビアンケ9位を皮切りに、ロンドやリエージュなど、ビッグレースで上位フィニッシュを連発。ジロローザでは新人賞も獲得し、ワールドツアーの新人賞ジャージをシーズン通して着用し続けたのです。飛躍のきっかけとなったストラーデビアンケのレース中、本来のリーダーだったベテランMoolman-Pasioの不調を受けて突然リーダーに指名されたシーンを思い出し、彼女はこう語ります。
And you’re like ‘this is the first race of the season, fuck!’ Suddenly, I’m the leader.
「これ今シーズン初レースじゃん!ファック(まじか)!」いきなり私はリーダーになった
「みんなを幸せになんてできない。アボガドじゃないんだから!」
I don't think too much about it (the fame). People who know me know that I'm a bit crazy, but in a good way. It's just because I'm comfortable in front of a camera and then I'm just being myself - it comes pretty natural. I don't think 'I have to put on a show now'
人気のことはあんまり考えない。知り合いのみんなは私がちょっとおかしいってことを知ってる、いい意味でね(笑)。カメラの前であまり緊張しないから普段通りの自分を見せてるだけ。「なんかしなきゃ」なんて思ったことはないよ。
去年のロンドを経て、一躍人気者の仲間入りをした彼女は今何を思うのでしょうか?急に人気がでたようなイメージがある彼女ですが、本人はそんなに気にしていない様子。「自転車選手にならなかったら女優にでもなってステージにあがってたかな」とうそぶく彼女の周りにはいつだって笑いと明るい空気が流れています。
"There will always be someone who is negative. You can't make everyone happy, you're not an avocado! I'm just trying to be who I am, take it or leave it."
いつだってネガティブな人はいる。みんなを幸せになんてできない。アボガドじゃないんだから!私は私、好きか嫌いかはご自由にっ、てね。
批判もあるにはあるみたいですが、そんなネガティブ発言もどこ吹く風です。
「サガンみたいな選手が女子にもいるといいよね」
I think it would cool to have a female Peter Sagan. Everyone loves him, he can do so much, he's an artist on the bike. So he's good and fun. I think that could be good for women's cycling
女性版サガンがいたら良いよね。みんなサガンのことが大好きだし、本当にいろんなことができる自転車上のアーティストだから。サガンは愉快だし楽しい。女子レースにもそんな選手がいたらいいと思う。
根っから明るい彼女らしく、女子レースが盛り上がっていくためにどうしたらいいのか、といくつかのインタビューで熱く語っているセシリー。彼女がサガンなみの実力を手にしたとき、女子レースシーンが男子に負けず劣らず注目される日が来るのかもしれない、、そんなことを思わせてくれる選手でもあります。
「本当のトップ選手になりたいなら、もっと強くならなきゃだめ」
If I want to be amongst Annemiek and those really top riders then I need to improve. But that's a good thing. It's good to have a goal and improve year by year.
もしアネミエク・ファンフルーテンみたいな本当のトップ選手なりたかったら、もっと強くならなきゃダメ。でもそれはいいことだと思う。毎年毎年ゴールをもって向上していくのはいいことだよね。
女子レースの盛り上がりを願うことももちろん、自身の成長にも貪欲なセシリー。今後の活躍が楽しみな、スター性をもった注目株です。マリアンヌ・フォスやアネミエク・ファンフルーテンなどの生きる伝説的なベテランと、クロエ・ダイガートやセシリーウトラップ・ルドヴィグといった新人類的な若手。女子レースシーンも面白くなっていきそう。
参考ソース
- Cecilie Uttrup Ludwig – conveyor belt to success | Rouleur
- Rouleur podcast: Cecilie Uttrup Ludwig, Rayner Foundation and Ribble | Rouleur
- Cecilie Uttrup Ludwig gives hilarious post-race interview after finishing third in women’s Tour of Flanders | Cycling Weekly
- Cecilie Ludwig praises OVO tour for attitude towards women's cycling | NewsChain
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