エクアドル出身25歳。モビスターは如何にしてリチャル・カラパスという逸材を発見したのか
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ジロ第4ステージは、モビスターのリカルド・カラパスがステージ優勝。第14ステージでは後続を2分近く引き離すアタックを決め、今年2度目のステージ勝利とともにマリア・ローザを着用しました。昨年のジロでエクアドル人として初めてのグランツールステージ優勝を飾り、総合4位に入った期待の選手です。

モビスターのボス、Eusebio Unzué氏は、どのようにしてカラパスという逸材を見つけることができたのか?モビスターとと南米とのパイプを少しだけ明らかにしたインタビュー(1年前くらい)があったので、他の情報と一緒にまとめつつ意訳しました。
100世帯しかない標高2800mの村出身

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昨年のジロが始まる前までは、カラパスは自国内でもほぼ無名の選手。一方で、ジロでのステージ勝利と総合4位という成績は、モビスターのチームの中では至極まっとうなものとして受け止められたようです。

“I wasn’t totally surprised by his Giro performance, but I was about his consistency,” said Movistar boss Eusebio Unzué. “Young riders are always ambitious. Sometimes that ambition can get the better of them. He recovered every day and really never made a mistake. We can all be very satisfied.”

彼の成績に驚きはしていない。驚いてるのは彼のパフォーマンスがずっと安定していたことだ。若い選手はいつも大望を抱いていて、それは良い方向にも悪い方向にも転がることもある。(昨年のジロでは)彼は毎日しっかり回復して、間違いを一度も犯さなかった。満足以上の結果を残してくれた。

このUnzue氏、実はナイロ・キンタナをヨーロッパにつれてきた張本人でモビスターのボス。カラパスはそのキンタナやウラン、チャベスやロペスなど、昨今のプロレースシーンに南米旋風を巻き起こしているうちの一人ですが、たった一つの違いがあります。

それは、彼がコロンビアではなく「エクアドル出身」だということ。

事実、自転車界で華やかな成功を収めた北の隣国・コロンビアと比べエクアドルの実績は劣ります。(2018年シーズンはコロンビアが32勝、エクアドルは4勝)その一方で、モビスターのチームメイトはカラパスと他のコロンビア人に大きな違いはないとも思っています。

“He’s Ecuadoran, but he lives very near Colombia, and cycling-speaking, he grew up as if he were Colombian,” Unzué said. “He’s from 2,800m [about 9,200 feet]. He’s very similar to the Colombians we’ve seen coming over.”

彼はエクアドル人だが、コロンビアの国境近くの町に住んでいた。ほぼコロンビア人だと言っても過言ではない。彼の出身地は標高2,800m地点にあって、その生い立ちは他のコロンビア出身の選手たちとも非常に似ている。

カラパスはLa Playaという100世帯ほどしか住んでいない小さな村の出身。(追記:Velonews情報。辻さんのCyclowiredレポートによれば人口6万人のトゥルカン出身。ProcyclingstatsによればEl Carmeloという集落出身。辻さんかProcyclingstatsの情報のほうが正しそうですが、とにかくコロンビア国境沿いの高地の街or村です)彼の両親が息子のジロでの走りををエクアドル山中の村のTVから応援している様子が以下の動画。あとから撮った物かもわかりませんが微笑ましいですね。

地元チームに入ってエクアドル国内レースに参戦していたカラパスの才能は、「キンタナの次」を探し求めるコロンビアのスカウトの目に止まり、若くしてコロンビアのチームと契約。2015年には、コロンビア人以外として初のVuelta de la Juventud de Colombia(アマチュア版ツアー・オブ・コロンビア)を制覇します。

モビスターと南米のパイプ

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(童顔で有名だったセビリャも今では42歳だが、今年もカラパスやキンタナを抑えてサンファンで総合3位)

最初にUnzueにカラパスの情報を持ち込んだのは、スペインのベテラン選手オスカル・セビリャ(2001年にツール7位&新人賞、ヴェルタ2位。現在はコロンビアのコンチネンタルチームで走っておりブエルタ・ア・サンフアンで昨年は総合優勝している)だといいます。Unzueはその情報を聞いて、早速カラパスをヨーロッパに呼び寄せます。

“I brought him over to Europe in 2016, with the Lizarte team, which is a feeder team to develop young talent,” Unzué said. “He quickly adapted to racing in Europe, and he’s been consolidating himself with results that revealed his potential.”

私は彼を2016年にヨーロッパにつれてきた。最初は育成チームに入れて走らせてみたら、すばやくヨーロッパのレースに順応し自分のポテンシャルを証明する結果をレースで残していったんだ。

カラパスは「キンタナの次」の男になれるのか

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(ボスのEnsebio Uzueとカラパス)

キンタナを見出したUnzueにとって、カラパスは最近のイチオシ選手です。小さく肝っ玉の座ったクライマーは、大望とそれを叶えるだけの才能を備えており、南米の小さな村の質素な暮らしから自転車ロードレースのピラミッドの頂点にまで上り詰めたその姿は、限りなくキンタナに重なります。

2018年のブレイクまでにも既にその兆しはあり、グランツールデビューだった2017年のヴェルタでは36位、パリニースでもマルク・ソレルをアシストしながら11位に入りました。しかし、カラパスは次のキンタナになれるのか?という質問には慎重な答えをしています。

“We’ll see how he develops,” Unzué said. “We already know how spectacular he can perform. It’s encouraging signs for the future.”

(キンタナの後継者になるかどうかは)これから彼がどう成長していくかにかかっている。私達は彼がどんなに素晴らしい選手かは分かっているしそれは確かな未来へのサインではあるよ。

ランダを筆頭にして、アマドールを加えた3エース体制でのぞむモビスター。カラパスの覚醒はあるのでしょうか。

有望な若手がひしめく南米出身の選手たち

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(2019ジロ第14ステージで自身初のマリア・ローザを着用し、感極まるカラパス)

キンタナ、ウラン、ガヴィリア、ミゲルアンヘル・ロペス、ベルナル…。名前をあげるだけでもキリがないくらい、もはや当たり前の様になってきた南米出身の選手たちの活躍。

現時点だとコロンビア出身選手がその大部分を占めていますが、ふと目をみやればエクアドル(カラパスetc.)やアルゼンチン(リケーゼetc.)、ベネズエラ、エクアドル(カラパスetc.)など、南米全体としてヨーロッパに才能ある選手を送り、一流自転車選手を輩出し続けるしくみができているように感じます。

コロンビアの人口は約5000万人で、南米ではブラジルに次ぐ2位の人口。南米全体の人口は4.3億人ですから、コロンビアはもちろん近隣諸国にもまだまだ才能が眠っているのでしょう。

参考ソース

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