今季UCIワールドツアー初参戦。スキー登山"SKIMO"選手アントン・パルザーとは?
Photo by Jorge Millaruelo on Flickr

昨年末、ボーラハンスグローエがマウンテンランニングとSKIMO(スキーモ)のスペシャリスト、アントン・パルザーとの契約を発表。現役ボート選手がZwift世界チャンピオンとなったタイミングとも重なり他競技出身選手として注目を浴びた存在です。そんな彼の経歴をシーズン本格開始前に詳しく探りました。

アントン・パルザーの経歴

アントン・パルザー、27歳、ドイツ出身。自身のホームページに掲載されていた戦績を抜粋してみます。

マウンテンランニングの戦績

2012年にジュニア欧州選手権で銀メダルを獲得し、翌年20歳で世界選手権/欧州選手権でトップ10入り。

Red Bull Dolomitenmann(登山ラン+パラグライダー+MTB+カヤック川下りをチームを組んでリレー形式で行う競技)では2016年から1位→5位→3位→2位と上位の常連。パルザー担当のランニングでは全てラップ2位もしくは3位。

2020年にはWatzmann-Crossingという有名なルートで2300m標高UPの23kmコースを2時間47分で走破しコースレコードを樹立。

また「世界で最も過酷な400m走」という異名をもつRed Bull 400(最高斜度37度にもなるスキージャンプ台の上まで一気に駆け上がる競技)でもいくつも優勝や表彰台のリザルトを残しており、長距離だけでなく中距離にも適性を見せています。

SKIMOの戦績

ジュニア時代から優勝を重ね、2015年にはシニアでワールドカップ初優勝。翌シーズンはシーズンランキングでも3位に食い込みます。

2017/18シーズンには「ヴァーティカル」と呼ばれる登りだけの種目でシリーズ王者となり、翌2018/19シーズンには「ヴァーティカル」及び総合でシリーズランキング2位と常にトップを走り続けてきました。

マウンテンランニングとは?

いわゆるトレイルランと同じかと思ったのですが微妙に違うようです。具体的には、、、

①走るのがトレイルだけではない

②標高差が激しく「登りだけ」レースも存在する

③距離が比較的短く、短くて15分程度、大体が8~12kmのレース

④バッグなどのギアを装着できない

⑤IAAF公認

Instagramにあがっている動画を見ると、かなりエクストリームな模様。。

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SKIMOってなんだ?

マウンテンランニングはなんとか想像がつくとして、SKIMOとは何なのでしょうか。雪山に現れると噂のエスキモーとも、お部屋探し中に現れると噂のスーモとも響きが似ていますが違います。SKIMOとはウィンタースポーツ競技。”Ski Mountaineering”の頭文字を取ったもので、直訳すると「スキー登山」です。具体的に何をするかというと、、

①スキーを履いたまま登る(スキー板に滑り止めをつける)

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②スキーを担いで登る(決められた、もしくは履いたままクリアできないセクション)

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③スキーで滑走する(下り)

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これら三つを組み合わせてその総合タイムを競う競技です。最終的にはこうなります。絶句。

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オフピステと呼ばれるゲレンデ外で行われることも、スキー場で行われることもあるそうです。いいですか、ゲレンデはリフトで登るものではありません。自力で登るものなのです。下記は2019年に公開されたアントン・パルザー紹介動画。

このSKIMO競技、実はヨーロッパではニッチながらも人気が出始めているスポーツ。一つの大会に数千人がエントリーするほどの規模になっているらしく、日本でも2005年に「山岳スキー競技日本選手権」が開催され、参加人数も増えているとのこと。

もともと雪山の移動手段としてスキーが用いられていたのが発展して競技化されたのが発祥で、今では専用にギアが開発されておりスキー板の重さはなんと750gと超軽量です。「アルペン、テレマーク、クロスカントリーと幅広いジャンルのスキーヤー、さらにトレイルランナーやスカイランナーなど、さまざまなバックグラウンドをもつアスリート達が参戦(share the mountainより)」しているとのことで耐久力自慢たちの異種格闘技の様相を呈しているようです。

なぜ突然ロードレース?

さて、そんなSKIMO選手のアントンがなぜ突然ロードレースにチャレンジするのでしょうか?一言でいうと突然ではありません。もともとトレーニングで自転車をよく使っており、彼のStravaデータを見てみると夏には月1600km以上も乗っています。昨夏にはBORAのルーカス・ペストルベルガーと一緒にトレーニングをしている様子も投稿。

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もしかするとコロナの影響でSKIMOやマウンテンランニングのレースが減ったことも関係あるのかもしれません。いずれにせよ、BORAとの契約に至った最後の決め手は「パルザーに強いモチベーションとロードレースにチャレンジしたいという確固たる意志があったから」というのはチームマネージャのラルフ・デンク談。モチベーションは十分のようです。

最初の一年に向けた抱負

“The challenges for me personally are, on the one hand, embarking on the development from individual sportsman to team player, and also a certain change of rhythm: Up until now I was primarily a winter sportsman, and now the focus is on summer, From a sporting point of view, I will have to slowly grow into cycling and develop a certain racing intelligence<略>My strengths certainly lie in the high mountains - but since the paths into the mountains are often flat and windy, I certainly have a lot to learn there!”
僕にとっての個人的なチャレンジは、独立した選手からチームプレイヤーになるということ、そしてメインシーズンが冬から夏に変わることだ。競技そのものに関して言えば、自転車に適性を持った身体に少しずつ成長させていかなければいけないし、戦術も学ばなければいけない。<略>僕の強みは標高の高い山岳にある。でも山岳までの道のりにはたいてい風の強い平坦区間もあるから、学ばなければならないことが沢山あるんだ!

今シーズンに向けてアントン・パルザーはこのように語りました。ケムナやシャフマンなど既に台頭しはじめている期待のクライマーが揃うドイツ。異類のスキーモがこの前線に加わります。

参考ソース

 

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