グランツールのTTがどんどん短くなっている件について、指揮官たちの意見
Photo by Konstantin Klein on Wikimedia Commons

近年グランツールで重要度が増すTT能力と、一方でどんどんと短くなるその総距離。その短距離化の背景を、関係者のコメントから探りました。

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10年で半分以下となったグランツールのTT距離

UCI会長がプリュドムさんに代わってから減り続けてきたと言われているTTの距離。

2020年も、ツールは第20Sの36kmのみ、ジロは第14s(新・第10S?)の33.7kmと最終Sの16.5kmで計51.2km、ヴェルタは第13Sの33.5kmのみと、距離は短くなっています。10年前は合計で100km超えがスタンダードだったことを考えると、かなり大きな変化です。

短縮化されたTTステージが以前のように総合成績に大きな影響を及ぼさなくなったといわれて久しく、実際、過去5年間(2015-2019)のツールドフランスで「もしTTステージがなかったら」という計算をしても総合優勝者が変わるのはフルームがウランに54秒差で勝った2017年だけ。2015、2016、2018年に至ってはトップ3すべての順位がそのままになります。

もっとも、本当にTTステージが全くなかったら展開も変わってくるわけで、さらに山岳系の選手がTTをうまくこなした結果上位に残っているという事情もあり、この計算の意味は深いようで浅いのですが。

TTをファンが求めていない?

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(2019ツール・ド・フランス第13Sは、アラフィリップが驚きの優勝をさらった大会を象徴するステージの一つ)

なんで短くなっているの?という理由はもちろん主催者のさじ加減に他ならないのですが、いくつかの通説があるみたいです。

関係者のコメントから探ってみると、まず一つの仮説が「ファンが多い選手向けのコース設定をしているから」説。フランスでいえばバルデやピノが勝てるようにTTを短くしている説です。

Organizers make courses to suit riders who are the fan favorites at the time.
レースオーガナイザーはその時のファンが多い選手に合わせてコースを作る。

もう一つの仮説は「見ていて退屈だから」説。鋭いアタックや迫力のスプリントなど、SNS受けするような分かりやすい「見どころ」的な要素を欠くTTの永遠の課題です。コアなファンはTT好きな人が多いので、おそらくこのブログ読んでくださってる皆さんはそうでもないかと推測しますが、何も自転車レースを知らない人から見れば確かに退屈かもしれません。

そんななか、ミッチェルトンスコットのホワイト監督はこう反論しています。

There is enough technology with power, GPS tracking and in-car videos to give the fans insight into how exciting and stressful these events are
GPSトラッキング、サポートカー内のビデオといったテクノロジーを使えば、(TTが)どれだけエキサイティングでストレスの多いかをファンも感じられるはずだ。

栄光のマイヨジョーヌでも、ツールドフランスにおけるチームTT勝利は一つのハイライトシーンでした。チームTTに関しては特に演出なくてもエキサイティングだと思うんですがね。。「見ていて退屈」説は、TTというレース形態そのものよりも、伝える側の課題だとも言えそうです。

TTステージが山岳ステージにスパイスを与える

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(2015ヴェルタ、総合首位に立つトム・デュムランに攻撃を仕掛けるアル、マイカ、キンタナ)

I'm not sure I'm a big fan of the super-long time trial stage but I do like their inclusion at a well-placed strategic point of the race, IT makes the riders who want to gain time in the mountains race and doesn't allow the TT riders to strangle a race
超長距離TTに関してはそんな好きじゃないけど、良いタイミングに配置されたTTステージは好きだ。TT系選手にレースを掌握されないために、山岳でタイムを稼ぎたい選手が出てくるからね。

この議論はし尽されてるような気もするので簡単に。仮にTTのレース形態が退屈なものだとしても、ステージレース全体でみれば、TTが苦手で山岳が得意な選手は山岳ステージで積極的な攻撃を仕掛けざるを得なくなり、レースは結果として活発となります。

トム・デュムランも昨年のインタビューで同じような趣旨のコメントを残していて、これ我が意を得たりと思った方は多かったのではないでしょうか。

※詳しくはりんぐすらいどを参照。

ひとりごと

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(今でも語り継がれるグレッグ・レモンの1989年ツールドフランス最終日逆転劇。エアロバーが全世界に注目されたきっかけでもある)

One of the great assets of our sport is that the course and race is so different in its nature every year. It's like a new puzzle to solve. Used wisely the combination of time trials and climbing makes for endless and exciting permutations.
このスポーツが本質的にもつ素晴らしさは、コースやレースが毎年違うという事だ。新しいパズルを解く感覚だよ。TTと山岳ステージのコンビネーションでどのように賢くタイムを稼ぐか、終わりのないエキサイティングな試行錯誤だ。

ブレイルスフォードの言う通り、TTを短くすべきか長くすべきか、グランツールのコースがどうあるべきよりか、という論点よりも、こうした不確定要素にどう対応するのか、と考えること自体がステージレースの醍醐味の本質なのかもしれません。

参考ソース

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