ニコ・ポルタル(享年40)の早すぎる死。ツール連覇を支えた監督に選手たちが贈った言葉。
Photo by www.instants-cyclistes.fr on Flickr

すでに先週のこととなってしまいましたが、悲しいニュースが飛び込んできました。スカイ&イネオスのツール連覇を誰よりも選手の傍で見守った監督、ニコ・ポルタルの死です。

スポンサーリンク

老練な若手監督と呼ばれたニコ・ポルタル

Embed from Getty Images
自身の2018年ツールドフランス総合優勝をつづった”The Tour According to G”で、ゲラント・トーマスはポルタルについてこのように語っています。

The team is more than the riders on the road. Having a sport director like Nico Portal came into its own once again when the pressure was on. <中略>He’s young to be a DS, only seven years older than me, but his composure is that of a grizzled old man. Six minutes can spook you into doing daft things. Nico on the team radio was the voice of reason. ‘Don’t worry, guys, stay together. Okay, Kwiato, you’re going to have to ride a bit earlier, but it’s all okay.’ The words were mollifying, even his voice calm.

チームとは、コース上を走っている選手だけのことじゃない。ニコ・ポルタルみたいな監督がいるとプレッシャーが掛かるような状況で有利に働く。<中略>彼は僕より7歳だけしか違わない若い監督だけど、中身は白髪交じりの老人のそれだ。6分。それは僕らが焦って馬鹿げたことをおっぱじめるには十分な差だった。ニコは無線でなだめるように穏やかに言った「みんな心配するな。固まって走れ。クウィアト、もうちょっとスピードを上げてくれ。それだけでOKだ」

プロトンのどのチームの監督よりも若いながら、ポルタルが思慮深い老練な監督だったことを物語るエピソードの一つに、2018年ツールに登場した石畳ステージを前にナーバスになっていた選手に対し、ポルタルが語りかけた言葉があります。

‘Boys, I know this stage is being talked up as a mini Paris–Roubaix, but it’s not actually Paris–Roubaix, is it?<中略>Are you going to win the Tour here? No. There are too many contenders and too many well-oiled teams. You could lose it, for sure, if you went down, or got sucked into the dirty air behind the lead group, but this is less about winning the stage than not messing up the entire three weeks.’

みんな、このステージはミニ・パリルーベなんて呼ばれているが、パリルーベなんかじゃないだろう?<中略>このステージでツールに勝てるか?答えはNoだ。でもこのステージで負ける可能性はある。落車したり、集団後方に取り残されたりしてな。これはステージ勝利のための一日じゃない。これからの3週間をめちゃくちゃにしないための一日だ。

結果として、同ステージでは予想通り落車が多発。Gトーマスとフルームは落車に巻き込まれながらも共にこのステージを無事に走り終えました。一方で、スカイからBMCに移籍していたリッチー・ポートは落車により鎖骨を骨折し、ツールを去ることに。

ポーカーとチェス

ポルタルは、ロードレースをしばしばポーカーやチェスといったゲームに例えてきました。ポーカーはリスクをとることの例えとして。チェスは戦略の例えとして。上記Velonへのインタビューでは「慎重にレースの流れをみて『ポーカーの時間だ』となったら、大きな大きなリスクをとる」と語り、一方でポーカーをプレーすることは避けるべきだとも別のインタビューでは答えています。

In chess, you know you’ve got strong pieces and good tactics, and based on that you know you can beat your opponent. At Sky we’ve certainly got some strong riders. I do look at other teams, though, and think that they’ve got some really strong riders, but they’re playing poker. When you play poker, you can lose everything on a single hunch. I prefer to play chess so that when I get the riders to move and expend their energy, there is some thought behind that, a tactical plan,

チェスでは、強い駒と良い作戦があって、それをベースにして相手に勝つことができる。確かに、スカイは強い駒を持っていた。他のチームも強い駒をもっていたけど、彼らがプレーしていたのはポーカーだ。ポーカーをプレーすると、一つのターンですべてを失ってしまうことがある。私はポーカーよりもチェスが好きで、選手たちが動いたりエネルギーを使ったりするときには明確な理由とプランがあるようにしていたい。

その冷静さや明晰さもさることながら、ポルタルが選手に慕われていたのは彼の優れた人柄によるところが大きいと多くの関係者が語っています。チームの大ボス、ブライルスフォードが彼を監督に指名したのはそんな人間性を高く評価していたから。心臓の手術を受けて選手を引退したポルタルにブライルスフォードは監督のポストをオファーし、英語が決して得意でなかった彼を驚かせたといいます。

You see, you don't speak English, but everybody understands you
(拙訳:わかるかい?君が英語をしゃべらなくても、みんな君のことを理解するんだよ

「彼の代わりになる人はいない」クリス・フルーム

ポルタルが初めて監督としてスカイを率いたのは2013年のこと。2012年にウィギンスによるイギリス人ツール初制覇を見届けチームを去ったショーン・イェーツを引き継く形となり、34歳という若さでの登板でした。

2013年ツールはフルームがツールを圧倒的なパフォーマンスで初制覇した年です。そんな戦友であるフルームは、ポルタルへの哀悼の意をツイッターで表明しています。

I have been at a loss for words since I heard the news, Aside from what an amazing friend, father and husband Nico was, I don't think people understand how important and influential Nico was in our team's success over the years.

ニュースを聞いてから言葉を失っている。素晴らしい友人、父、夫であったという事実のほかに、彼がチームにとってどれだけ重要で、どれだけ影響を与え続けてきたかについて知っている人は少ない。

He is completely irreplaceable, to the point where it's hard to imagine where to go from here. He was with me through the hard times, picking me up any time I doubted myself, and right by my side encouraging me to every success. He has left a truly phenomenal legacy.

彼は誰かとは代えがたい存在で、これからどうすれば良いのかわからない。僕が苦しいときも、僕が自身を信じられなくなった時も、彼はいつでも僕の味方でいつづてくれた。かけがえのないレガシーを残してくれた。

「ただの同僚ではなく友人だった」ゲラント・トーマス

フルームとともにチームの創成期からポルタルと多くのレースを戦ったゲラント・トーマスも彼の功績に対して敬意を表しました。

「まだよく理解できていない。悲しすぎる。ニコはとても才能にあふれていて、温かく誠実で、必要な時にいつもそこにいた。彼はただの同僚じゃなくて、友人だった

明るいニュースを待つプロトン

レースシーンがCOVID-19で揺れる中での、精神的支柱としてスカイ&イネオスの選手たちを支えてきたポルタルの死。ネガティブなニュースが続くプロトンが、なかなか訪れない春と明るいニュースを待っています。ポルタル監督の若すぎる死に、お悔やみ申し上げます。

参考ソース

スポンサーリンク

Twitterでもタイムリーにつぶやいてます