世界で3番目に報道自由度が低い国。ベールに包まれた自転車大国エリトリアのストーリー
Photo by filip bossuyt on Flickr

2017年12月、約2年前のこと、大規模な予告もなくウェブ上に突然現れ、特にバズりもせずなんとなく忘れ去られた動画作品があります。

その名も”KING OF MOUNTAIN”、山の王者。

アフリカ・エリトリアのエースであり、アフリカ出身黒人初のツール・ド・フランス出場および完走を果たしたダニエル・テクレハイマノを追いながら、エリトリアにおける自転車競技に迫る内容の28分の長編です。

King of the Mountains - SW from Sinamatella Productions on Vimeo.

スポンサーリンク

世界報道自由度が北朝鮮レベルの国で取材が行われた理由

自転車後進国ばかりが集まるアフリカにあって、エリトリアが隠れた自転車大国であることは前回の記事で述べました。現在では、日本よりも実績を残している国とさえいえる勢いです。

ただ視点を少し変えてみれば、報道の自由が極端に限られた国であるということも事実。世界報道の自由度ランキングは180国中178位という(ちなみに中国が177位、179位は北朝鮮、180位はトルクメニスタン)ありさまです。

このような報道の厳しい国で作品が作られたことはとても興味深いのですが、本作品の作者James Walshに発注したのは中国のChina Global Television Network (CGTN)。アフリカ大陸の様々な側面を追う”Faces of Africa”の一つのストーリーとして制作を依頼されたのだとか。

I didn’t wanna jump in guns blazing. And I think Daniel and Merhawi, and Eritrean cycling story is a great lens into the country and hopefully … all our African stories are trying to find an interesting angle for a global audience to see the continent in a different light, and then learn more, and read up more themselves, and make up their own minds.
(抄訳:私は弾丸が飛び交う戦場に飛び込みたいわけじゃなかった。ダニエルとメルハウィ、そしてエリトリアのサイクリングの歴史はこの国を見るレンズとしては最適なものだと思えたんだ。願わくば、私達が作った動画作品をとおして、人々がアフリカ大陸を違った目線で見れるようになることを目指した。この作品を見た人々が、彼ら自身で学び、多くの文章を読み、そして彼ら自身でアフリカに対するイメージを作っていければいいと思った。

「彼らはロックスターになった」エリトリアに深く根付くサイクリング文化

Embed from Getty Images
事実、サイクリングイベントはエリトリアにおいて最も人気のあるエンタメの一つとして浸透しています。特にその首都アスマラでは毎週末どこかでレースが行われ、大きな盛り上がりを見せているのです。

“No weekends pass without streets being blocked for a cycling event,” <中略> “People are surprised if the streets aren’t blocked. Cycling has become a cultural space where people meet to talk. It has become a part of city life.”
(抄訳:毎週末、街の通りはサイクリングイベントで封鎖される。<中略>もし封鎖されていなかったら逆に驚くだろう。サイクリングはこの街の文化であり、皆が話題にする。この街の生活の一部なんだ。

そんな国の熱狂の中から生まれたのがテクレハイマノであり、クデュスなのでした。ディメンションデータ(当時)のマネジャーはのちにこう語っています。

“These guys have become absolute heroes and rock stars. As a team, we’ve opened the door for the Eritreans and other African countries, and now other international teams are looking at how good they have become.”
(抄訳:彼らはヒーローになり、ロックスターになった。エリトリアと他のアフリカの国々に未来への扉を開けたんだ。そして今、数々の国際的なチームがどれだけ彼らが才能にあふれているかを目の当たりにしている

強さの秘訣はその心肺機能の高さ(首都アスマラの標高は2300m!)で、さらに年中良好な気候がトレーニング環境として非常に適しているんだとか。

時をさかのぼれば、イタリア植民地時代から続くエリトリア自転車選手の系譜は、50年以上前からずっと続いています。1964年東京五輪、エリトリアはただ一つの黒人系アフリカンのチームでした(ただし、当時はエチオピアに占領されていたためエチオピア代表として出場)。

その後もサイクリングの文化は途絶えることなく、今までの努力の一つの結晶としてツール出場&完走を果たしたエリトリア。一方で、「次のステップ」を踏みあぐねているところが、少し日本に重なると感じた私なのでした。

最後に もう一つの作品

フィルムメーカーであるJames Walshは同じ取材からもう一つの動画作品を残していて、その取材対象となったのはテクレハイマノとともにツールに出場&完走したクデュス。現在はアスタナに籍を置き、テクレハイマノが調子を落とす一方でコンスタントに好成績を残しているエリトリアのエースです。

このクデュス、エリトリアのオリンピック選考レースを一歩リードし、選ばれるのもほぼ確実だと思われていますが、他はどの選手が選ばれるのでしょうか?日本だけでなく、静かに盛り上がりをみせるオリンピック代表争い。アフリカ勢にも要注目です。

参考ソース

スポンサーリンク

Twitterでもタイムリーにつぶやいてます