チームの将来はスカウトで決まる?ワールドツアーチームの若手発掘・育成戦略

前回の記事では、なぜ最近のレースシーンで若手選手が活躍するようになったのか?ということをまとめました。今回は各チームの才能発掘競争に焦点をあててみたので、各チーム監督のコメントとともにお楽しみください。

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10年以上前に始まった有望選手発掘競争

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10年以上前から、自転車ロードレース界は前代未聞のドーピング騒動に揺れ続けた。

私が覚えている限り、まず衝撃を与えたのがフェスティナ事件だ。数年後には、当時最強を誇ったランス・アームストロングのツール7連覇が抹消される。ランスなきレースシーンでも、グランツールや各種レースで活躍した選手が軒並みドーピング陽性反応によりレース出場資格を失っていった。畳み掛けるように自転車界を揺るがしたのがオペラシオン・プエルト。名だたるビッグネームたちがそのリストに名を連ね、もはやプロトン内の殆どの選手がドーピングをしていたのでは?と感じさせるほどだった。今もまだ、そうした選手たちの有罪ニュースが話題になり続けている。

そんな暗黒時代から抜け出そうと、各プロチームが求めたのが「グレーな歴史のないフレッシュな選手」であり、それによりスカウティング活動が活発になった、それがVelonews記事が示唆するところだ。もちろん、若手のほうが給料が低くコスパが良いという切実な理由もあるだろう。なんにせよ、若き才能の発掘⇨育成という流れは、強豪ワールドツアーチームの中で間違いなくトレンドとなっている。

それでは、実際チームはどんな動きをしているのだろうか?

才能発掘と育成と。各チーム監督の頭の中

そんなわけで各チームのスカウティング活動をウオッチするのがいま面白いわけだが、特に若手スカウトに熱心なチームのコメントをまとめてみた。

ユンボビスマの秘策

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まず銀河系軍団として来シーズンへの期待が高まるユンボビスマ。

今年最たる結果を残した選手はログリッチェ(スロベニア・30)だろう。他にも現役最強スプリンターの一人であるフルーネウェーフェン(オランダ・26)や将来有望なセップ・クス(アメリカ・25)などがこのチームで才能を開花させている。

育成だけではなく、ビッグネームの獲得にも積極的だ。昨年はCX世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー・25)を獲得し、来年からはトム・デュムラン(オランダ・29)も加入。ここ最近のストーブリーグで存在感を発揮している。

ラボバンク下部組織時代からずっとこのチームに所属している生え抜きクライスヴァイク(オランダ・32)の存在はチームにおける選手育成という観点では目を引く。リチャード・プルッへGMはこう語る。

“Our philosophy is to take young riders and develop them slowly,” said team manager Richard Plugge. “It’s a different mentality than some teams. We like riders to ‘grow up’ with us and feel a bit like a family. We give every rider a chance to perform at a certain point of the season,” Jumbo-Lotto’s Plugge said. “Too often young promising riders become workers, and they lose that winning instinct. We like to see all of our riders race to win at a few points of the year.”

拙訳:我々のフィロソフィーは若い選手を獲得し、ゆっくりと育てること。他のいくつかのチームとは違うメンタリティだ。我々は選手たちにチームと一緒に成長することで家族の一員のように感じてほしいと思っている。将来ある若手がただの労働者になってしまい勝利への本能を失ってしまうことがよくある。私達はすべての選手に対してシーズン中のどこかのタイミングで活躍するチャンスを与えることにしているんだ。

ドゥクーニンク・クイックステップが誇った下部育成組織

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プロトンでも異彩を放つ最強集団”ウルフパック”のドゥクーニンク・クイックステップはどうだろうか?なんと27名の所属選手のうち、10名の選手が25歳以下。ジルベールはじめビッグネームがそろう印象が強いチームとしては意外な数字と感じる人も多いかもしれない。

その中には、スペインの次世代エース、エンリク・マス(スペイン・24)やヴェルタでステージ優勝を飾ったレミ・カヴァーニャ(フランス・24)などが含まれる。彼らの共通項は、Klein Constantia Continental Team(2016年に解散)というクイックステップ下部組織出身だということ。イネオス入りしたジョナサン・ナルバエス(22)をはじめ他チームへの流出も多々あるものの、ルフェーブルの教え子たちが様々なプロチームで活躍している。

“The future of the sport is in young cyclists,” said Deceuninck-Quick-Step boss Patrick Lefevere. “When I came up, there was not much attention paid to developing young talent. They were often neglected in favor of the big champions of the day. I wanted to change that when I became a sport director.”

拙訳:このスポーツの将来は若い選手にかかっている。私がこの世界に足を踏み入れたとき、若手育成なんてものには誰も興味を持っていなかった。時のチャンピオンの裏で無視され続けてきたのが若手選手たちだ。私が監督になったとき、これを変えたいとずっと思っていた。

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そんな彼が目をかけているのが皆さんご存知レムコ・エヴェネプール(ベルギー・19)。ルフェーブルはこんな言葉を残している。

“My only job with a rider as good as Remco is not to mess it up,” said Quick-Step’s Lefevere. “I have seen many good young riders go too fast too soon. He is too young to race the Tour de France [in 2020]. We must give him space to move, but also not throw a wrench in the wheel.”

拙訳:レムコのような素晴らしい選手に対して、私ができる唯一の仕事は「めちゃくちゃにしないこと」だけだ。私は、早く階段をあがりすぎて潰れてしまった将来有望な若手選手をたくさんみてきた。2020年ツールに出るには、彼には若すぎる。私達は彼に自由を与えなければいけないけど、ホイールにレンチを投げ込むような手荒な真似もしたくない。

UAEに移籍した元・ルフェーブル右腕の目利き

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オイルマネーをバックグラウンドに選手補強をすすめるUAEも、若手のスカウトにも力を入れており、タディ・ポガチャル(スロベニア・21)という今シーズンを象徴するような選手の他にも、ジャスパー・フィリップセン(ベルギー・21)というルーキーながらツアー・ダウンアンダーでステージ勝利をあげている選手がいる。

実は、UAEの監督Joxean Matxin Fernandezは先述したKlein Constantiaでルフェーブルのためにスカウトとして働いていた経歴がある。チームを移籍しても、彼の目に狂いはないようだ。

“There have always been good riders coming up,” Fernández said. “The big difference today is that a lot more teams are investing in young riders and in developing talent. Before you had to prove yourself to get a contract. Now teams give riders a chance to grow.”

拙訳:今までだって良い選手は自然に表に出てきていた。最近の大きな違いは、若手選手育成に多くのチームが資金を注ぎ込むようになったということだ。以前は契約を勝ち取るために、自分の力をまず証明する必要があった。今はチームが選手に成長のチャンスを与えている。

INEOSを率いるブライルスフォードの頭の中

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他チームとは一線を画す予算規模のINEOS。11名もの25歳以下の選手を擁するINEOSも若手選手の獲得に走り回る。

トラックを主戦場とするイギリスのホープ、イーサン・ヘイター(イギリス・21), 現スペインジュニア王者カルロス・ロドリゲス(スペイン・18), 若きベルナルと戦いを繰り広げたMTB選手ブランドン・リヴェラ(コロンビア・23)の3選手の加入を発表したばかり。

今までにも、エガン・ベルナル(22・コロンビア)はもちろん、パヴェル・シヴァコフ(22・ロシア)、ゲオゲガンハート(イギリス・24)、セバスチャンエナオ(26・コロンビア)、ジャンニ・モスコン(25・イタリア)など、錚々たる若手がINEOS(旧スカイ)にてワールドツアーデビューを果たしている。

最後に

わかったのはINEOSがめちゃくちゃ青田買いして今のところ成功しているようだということ。みんな知ってますね。笑

あと個人的に注目したいのは、ユンボ・ビスマの下部組織ユンボ・ビスマ・アカデミーが来年から発足すること。どんな選手がでてくるのでしょうか。

今シーズン序盤から「打倒スカイ・INEOS」を声高に宣言し続けるユンボビスマの活躍が楽しみです。

参考ソース

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