ベルナル,エヴェネプール,ポガチャル…新星”ジェネレーションZ”の台頭が物語るロードレースの変化

MTB・シクロクロス・ロードレース全てで勝利を量産する24歳マチュー・ファンデルポール、ツール・ド・フランス総合優勝した22歳エガン・ベルナル、ヴェルタ・ア・エスパーニャ表彰台に登った20歳タディ・ポガチャル、サンセバスチャンに勝った19歳レムコ・エヴェネプール、…

今年は信じられないほどの若さで大きな勝利を掴む選手が続出しました。

彼らは1995から2010年に生まれた、一般的に「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代で、ほぼ23歳以下です。サガンやクヴィアトコウスキー、モレーノなどが「黄金の1990年世代」と呼ばれていたことが記憶に新しいですが、既に彼らを追い越そうとしているのが「ジェネレーションZ」のマチューやベルナルたちなのです。

そんな「ジェネレーションZ」が台頭してきた理由をVelonews記事”How Remco Evenepoel, Egan Bernal, and other Generation Z riders are changing pro cycling”
を引用しながら探ってみました。

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今年のロードレースシーンを賑わせた”ジェネレーションZ”の新星たち

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今更言うまでもないが、今年は若手の活躍が光った。

ベルナル、エヴェネプール、ポガチャルなどは言わずもがなではあるが、極めつけは、サガンやコンタドールなどのスーパースター級の輝きを既に放っているのがマチュー・ファンデルポールだ。

さらに、彼らの影に隠れてしまったものの、大きな結果を残した「ジェネレーションZ世代」の選手は多い。

例をあげよう。

パヴェル・シヴァコフ(22)はワールドツアーステージレース、ツール・ド・ポローニュで総合優勝。ダビデ・ゴデュ(23)はピノを最終局面までアシストしながらツール総合13位でフィニッシュした。昨年U23王者のマーク・ヒルシ(21)はサンセバスチャンでエヴェネプールに迫る3位などワールドツアーで一桁フィニッシュを重ねた。世界選手権で誰も予想しなかった勝利をさらったのは、昨年ロンド2位のマッズ・ペデルセン(23)。トラック4kmIPで前人未到の世界記録を樹立したフィリッポ・ガンナ(23)もジェネレーションZの一人だ。

こう見てみると、もはや23歳位で活躍するのはあたりまになったという印象すら抱く。そのうちの代表的な選手であるベルナルを指して、最強のベテランであるバルベルデはこんな言葉を残している。

“The future is his,” Valverde said. “What he did last year was already impressive, but to win the Tour at 22 is something quite impressive. Let’s hope it’s not for the next 10 years, because it could get quite boring for the rest of us.”

拙訳:未来は彼(ベルナル)のものだ。彼が昨年成し遂げたことは既にすごいことなのに、22歳でツールを勝つなんて本当にものすごいことだ。これが10年続かないといいね。だって他の選手にとってつまらなくなるから。

なぜ彼らは若くして台頭してきたのか

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若いうちから結果を残す選手はなにか共通項はあるのだろうか?なぜ彼らはそんなに早く出世街道を駆け上がることができるのだろうか?Velonews記事内のポイントをまとめてみる。

持って生まれた才能(遺伝子)がある

例えば、ファンデルポール、エヴェネプール、シヴァコフを例に取ろう。彼らの共通項は、親が才能ある自転車選手だったということだ。ファンデルポールは誰しもが知る自転車一家に育ち、エヴェネプールは父親が、シヴァコフは両親がトッププロだった。

また、ベルナルの父親はプロではなかったもののコロンビアのトップアマチュアとして名が知られる存在で、父から受け継いだ身体能力は非常に高く、VO2MAXは90を超えるという。

もちろん、遺伝子だけが理由なら、今になって若手の活躍が増えたことの説明にはならない。

それでは、昔と今で変わったことは何なのか?

科学的アプローチが浸透した

一昔前と大きく変わったことといえば、トレーニングやレースに対しての科学的アプローチが当たり前になったということだ。

マージナル・ゲインに代表されるような改善の積み重ねの結果導き出されたベストプラクティス(よりよい戦術、よりよい食事、よりよい機材、よりよい回復…)を誰しもが利用できるようになれば、たとえその選手に経験がなくとも、才能(遺伝子)があれば結果はついてくる。

もしその選手に規格外のモーターすらついていれば、そしてそれをうまく使えるテクニックを既に身に付けていれば、すぐにでもパフォーマンスの向上が見込めるシステムが出来上がっているということ。このポイントがここ20年徐々に変わってきたことで、だから才能ある若手がすぐに頭角を表すようになったと言えそうだ。

才能発掘のシステムが出来上がった

もう一つ、ここ最近の変化は、ヨーロッパだけでなく、世界中にスカウトたちが目を向けるようになったことだ。「グローバル」という言葉を耳にタコができるほど聞かされるこの時代、より輝く才能を見つけるにはより広い地域を見ることが寛容だ。

自転車王国のベルギーやオランダ、フランスには地域クラブからトップチームまで、ステップを確実に踏んでいけば上まで登りつめていける仕組みが整っている。同様に、コロンビアやロシアには有望な若手をヨーロッパに送り込むようなパイプと仕組みがある。例えば、モビスターはまだ名前の売れていなかったカラパス(今年のジロ覇者)をスカウトによりヨーロッパに呼び寄せ、下部チームで走らせたあとにトップチームに加入させている。

そうした若手の才能の見本市(言い方を変えれば若手の登竜門)のような存在がツール・ド・ラヴニールやU23世界選手権だ。こうしたレースで際立った走りをすれば、トップチームからの引き合いがくる。

つまり世界的に「トッププロになれるか試すチャンスがない」というケースが減ってきているということだろう。

最後に。続く

より広い世界にスカウトがアプローチできるようになったことで、より際立った才能がロードレース界に足を踏み入れることになった。

加えて、科学的アプローチが浸透したことで、才能ある選手であれば短時間でパフォーマンスが向上するため、経験や伝統など関係なく短期間で結果を残せるようになった。

それが”ジェネレーションZ”台頭の理由だということです。納得。

それから、個人的に興味深かったのは、記事中のこの文面です。

Many insiders cite a cleaner peloton for helping to clear the path for young talent to shine. The fact that a 22-year-old can win the Tour is viewed by many as a sign that cycling has leveled the playing field dramatically since the days of a peloton at two speeds.

拙訳:多くの内部関係者が、若き才能が輝く機会を与えられていることは、プロトンがクリーンになっている証拠だと口をそろえる。22歳でツールを勝てるということは、(ドーピングをしている選手としていない選手の)2種類の戦いがあった時代から、平等な条件による戦いの時代に変わったからだと見ているのだ。

クリーンになったからこそ、若手が活躍できるようになってるんだと。深い。次回の記事では若手選手の発掘と育成についての各チーム監督のコメントをまとめます。

続く。

 

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