高くて厚い世界の壁と希望と。苦汁を飲んだチーム日本の未来は明るいか【UCI世界選手権2019】
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コロンビアのジュニア選手のトラブルと来ないチームカー、U23ではまさかの優勝者失格など、感情が沸き立つ場面の多かった今年の世界選手権。

エリート女子ではファンフルーテンが驚愕の100km以上独走勝利、エリート男子は雨のサバイバルで有力選手が続々とリタイア。

本当に色々な盛り上がり方をしました。一方で、日本選手についてはあんまりTwitterでも発信できなかったので記事にしてみました。

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チーム日本はどんな成績を収めたのか

まずDNFに終わった新城のコメントから。言葉の節々に無念さがほとばしります。

ブエルタが終わってからも調子は良く、(17位に入った2015年の)リッチモンドでの世界選手権ぐらいの身体のコンディションでした。紙の上では自分向きのコースだったので、それだけに相当悔しいですね。シーズン残りのレースで良い走りをすることも重要ですが、それよりも今日結果を残したかったので悔しい。

でも自分のミスだから悔しがれません。自転車レースを知っていれば、一回ミスして中切れが起こったらいくら力があっても人数のいる集団との差を埋められないのは分かるじゃないですか。そうならないように走るべきなのは分かっているんですが、また経験値を一つ増やすだけの結果になってしまいました。

せっかく4〜5年かけて良いナショナルチームを組んで、意思を統一できている同じメンバーで戦えているだけに、良い形で締めくくれなかったのは残念です。

エリート

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男子ロードレース 新城幸也、中根英登ともにDNF
女子ロードレース 與那嶺恵理:DNF
女子TT 與那嶺恵理:29位

日本で最も世界に近い存在といっても良い與那嶺恵理がロードレースはトラブルでDNF。期待された新城&中根コンビも不発に。

U23

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男子ロードレース 石上優大:32位、今村駿介:112位、松田祥位:DNF
男子TT 松田祥位:38位、今村駿介:45位
女子ロードレース 岩元杏奈:49位

なんといっても石上の第2集団・32位フィニッシュが目を引きます。

ジュニア

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男子ロードレース 山田拓海、津田悠義ともにDNF
男子TT 山田拓海:46位、津田悠義:61位

ジュニアで出場した山田・津田両名はともに悔しい結果に。

海外に飛び出す日本選手たち。新城・別府に続く存在が現れない現状。

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新城幸也、別府史之が欧州のレースシーンに彗星のごとく現れ、「日本人なんて世界じゃ戦えない」という考えを根底から覆してから10年以上の時が経ちました。

それから何人もの選手が毎年海外へと飛び出すようになってきています。一方で、なかなか2人に次ぐ存在というのが現れてこないというのも現状。それは何を意味するのか?ストレートに答えてしまえば「それ”だけ”じゃ勝てる選手にはならないから」。

この20年、数えきれないほどの日本人選手たちが海外でのレース活動を実施してきました。

これらが示しているのは、単に海外で活動しただけでは、ツールで勝てる選手は生み出せないということです。

フルームの師であるブレイルスフォード代表もかつてはロードレースの選手としてフランスで活動していましたが、自分にはプロになる才能がないことを早々に悟り、20代で選手を引退して指導者の道に進みました。

「勝てる才能を持った選手を発掘する作業」こそが、まず最初に取り組まなければならないミッションであることは間違いありません。

いつか必ず我々の目の前に現れるであろう「怪物」を発掘するために、様々な形で「時代を繋いでいる存在(レース開催やチーム運営、そして自らの限界を悟りつつも走り続けている選手たち)」がいることを、頭の片隅に入れておいていただければ幸いです。

注意したいのは、これはあくまで全体論の話ということ。「日本が国として強い選手を発掘して育成するにはどうしたらいいか」という問いに対して、「海外にどんどん人を送り込む」というのは必ずしも正解じゃないよって話です。

だから海外に挑戦してて結果がなかなか出ない選手を叩くのはお門違い。私なら、もし若手選手が海外挑戦のオファー受けて迷ってるなら「行ってみなはれ」とアドバイスします(そんな機会ないけど笑)。間違いなくその経験は、彼/彼女のその後の人生の財産になりますから。

「どのレースがエラいの?」国内レースが盛り上がるために

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それでは、ここで国内のレース事情に目を転じてみましょう。国内レースというのは大事な場所というのを理解してもらうために、もう一度だけ栗村さんの持論を引用。

なにが言いたいかといいますと、勝てる選手を生み出すためには、以下の項目が必要になってくるということです。

◯勝てる数字を叩き出せるポテンシャルを持った選手を発掘する(自転車レースの底辺を広げる)

◯勝つために必要な数字を段階的に習得させる(トラックレースやシクロクロスなどが有効?)

◯勝つためのスキルを段階的に習得させる(本場のロードレースを経験する/但し上記2項目をクリアしていない選手はスキルを習得しても勝てる選手にはなれない)

◯勝てるチームに加入する(数字やスキルを習得したあとはアシストが充実したチームが必要)

正直、上記の「総論」を全体で共有した後に、「各論」の議論に進んでいかないと埒が明きません。巷で語られている、「シクロクロスが良い!」、「トラックレースが良い!」、「国内ロードレースの距離を伸ばせ!(シクロクロスやトラックレースは短距離だが...)」、「本場のロードレースを走らないと強くなれない!」などいった言葉はあくまで「各論」であり、いまいちど「なぜそれらが良いのか?」の分析(それほど難しくはありませんが...)を行い、その上でなにを「選択」して日本のロードレース界を強化していくのかを決めなくてはなりません。

そう、またこのキーワード「才能の発掘」です。

そのためには底辺を広げることが大事だから、国内のレースも盛り上げるのも大事。チャンスと実績が求められる海外挑戦とは違って、どんな人にでも出るチャンスがあるから。

国内レースのはなしをすると「世界と比べてレベルが低い」と言い出す人もいますが、国内トップ選手と本気のレースを走ったことがある人なら軽々しくそんなことは言えないでしょう。あの強さはほんともはや人じゃない。それに、別にレベルはどうでもよくて、才能がそこに足を踏み入れたいと思うようなキラキラした場所であるということがとりあえずは大事という考え方もあるんです。レベルが高いから盛り上がるのか、盛り上がってるからレベル高くなるのか、どっちが先なんだと言う話はありますが。

じゃあどうしたら盛り上がるのか?

サイスポ連載「自転車爆論:国内ロードレースのプロスポーツ化はどうなっている?」に載ってた議論が示唆に富んでたので紹介します。

鏑木 だから、どのレースがエラいの?って思っちゃう。
CS 格式ですか。
鏑木 国内レースで例を挙げるなら”ツール・ド・おきなわ”(市民210)で勝った人って、全日本チャンピオンと同じくらいエラそうな雰囲気があるでしょ。
菊池 いや、それはカブのリテラシーが低いせいでしょう。ホビーレーサーの発信力は大きいので、カブの言いたいことは理解できるけどね。でも、格式はしっかりと違うよ。
鏑木 もっとわかりやすくすべきでしょう。それが、レースの魅力を伝えられない原因の一つだと思う。

冗談交じりとはいえ、結構この鏑木さんの意見って共感できるなって思ったんです。国内でよく知られているのは、どちらかというと世界のトッププロとか日本のトップ選手じゃなくて「最強ホビーレーサー」と呼ばれる方たち。もちろん強いホビーレーサーというのは本当にすごい。時間マネジメント力とかも含めて人としてすごい。パフォーマンスだけみてもプロと渡り合える選手はたくさんいます。

でも、だからこそ、実力的に日本を代表する選手たちは、もっと皆から一回りも二回りも大きく「すごい!」と思われないといけないといいますか。スポンサーとかの観点からも、人に感動を与えるという観点からも。

選手ももちろんですけど、ファンがいてこそスポーツは盛り上がると思うのでこの「すごい!」ってならない分かりづらさって結構致命的。

「〇〇さんの息子、Jリーグの選手なの?すごーーーい!」

とサッカー知らない犬の散歩中のおばさんがはしゃげるくらいのわかりやすさが必要だと思うんです。

「〇〇さんの甥っ子、Jプロツアーの選手なの?すごいじゃないか!(心の声:なんだそれ食えるのか?よくわからないけどすごいと言っておこう)」

と飲み屋でオジサンが愛想笑いを浮かべるようではよろしくないんじゃないかと。

ぶち上げられた国内新リーグ構想。

そこで今年突然ぶち上げられたのが、2021年にスタートするJBCF新リーグ構想。どのレースがすごいんだか良くわかんない現状を破っていこう、もっと明確なヒエラルキー作ってピラミッド状にして、さらに底辺を広めていこうという試みです。

注目の新リーグについては、まだ決定事項ではないとしつつ、フランスの国内カテゴリー制度を参考に「強い国内リーグ」を作り上げるという「構想」が発表された。

これは、上位3部のカテゴリーを「プロフェッショナルカテゴリー」とし、その下にJエリートツアーに相当する5つの「エリートカテゴリー」、さらにその下に未登録レーサーを含む「オープンカテゴリー」を設定するピラミッド構造を構築し、選手層の底辺拡大を狙う。プロフェッショナルリーグには「クラブライセンス制度」を導入。条件を満たすチームを2020年夏頃をメドに精査し、2021年から新リーグをスタートさせるとしている。

新リーグ構想について、選手を代表してコメントした増田成幸(宇都宮ブリッツェン)は「たくさんの選手が集まることは必然的にレベルが上がるということ。今からワクワクしている」と語った。

まだ「絵に描いた餅」で課題は山積みだとはいうものの、あるべき姿には向かっていると感じます。

変化しない限りは、前へは進めません。

そして彼らは前を向く。

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一方で、リーグ云々の話はあくまで枠組みの話。結局のところ、レースを走り、ドラマを生み出すのは選手たちです。彼ら一人ひとりの人生をかけた取り組みとそこから生まれた走りが、見る人に感動を与え、勇気を与えます。ということで、最後は選手たちのコメントで締めておきます。

日本ジュニア界ではほぼ敵なしの強さを誇りながら、世界を相手に惨敗した津田選手のコメント。

強くならないといけない。そして今日という日を絶対に忘れない。今日のこの結果を忘れなければ、自分の中で高いモチベーションを保ってトレーニングできると思います。シーズンを振り返ってみて自分のスケジュール(調整)不足でした。今すぐに来年に向けて何をしないといけないのかを計画的に考えないといけない。自分の中で変えます、全てを。この経験をさせていただいて、ネガティブな気持ちを引きずるのか、それとも現実を受け止めて変えることに向けて行動を起こせるのか。今は悔しさというものがものすごくありますが、自分の中では後者にしたい。そして、ここで戦いたいと改めて思いました。

 一方、手応えを掴んだのがU23世代では不動のフロントランナーでもある石上選手。今期からはNIPPOのトレイニーとなり、さらに上のレベルでのレースを走ることが予想されます。

今はもうすっからかんです。最終周回の時点で胃が痛くなり、ボーっとし始め、気合いで最後まで出し切りました。でも楽しかったですね。めちゃくちゃ楽しかったです。最初は超ストレスフルで『何だこのレースは』と思ったんですが、後半の登りに入ってレースに加わっている感じもありました。プロのレースだと引きづられている感があって楽しめませんが、今日は格上の選手たちと走れていることを楽しめました。今回は第2集団のフィニッシュでしたが、上手く走れば上位に絡めるかなという感じを掴めました。

語る言葉が力強く、「走りで魅せる」こともできる若手選手たち。期待に押しつぶされず、これからも腐らず壊れず強くなっていってほしい。

がんばれ日本。

参考ソース

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