祝パリ〜ルーベ初制覇!ファンから愛される漢・ジルベールが振り返る「選手人生を変えた5つの勝利」
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全ベルギーが泣いた、攻撃的な走りが魅力の”漢”ジルベールのパリ〜ルーベ初優勝。モニュメント(5大クラシックレース)の4つめを手にした稀代のクラシックハンターの強さは年を重ねても衰えることを知りません。ジルベール自身がチョイスした「キャリアを変えた5つの勝利」を今後の抱負とともにまとめました。

ジルベールのキャリアを変えた5つの勝利

2012年の世界選手権制覇を筆頭に、アムステル・ゴールドレースの4回に渡る勝利、ジロ・デ・ロンバルディアの2勝、ロンド・ファン・フランデーレン、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、フレシュ・ワロンヌ、グランツールステージで数々の勝利…。重ねた勝利リストは終わることがありません。特に2011年は、近年稀に見る「最強」ぶりを発揮していた男ですが、彼自身が選ぶキャリアを変えた5勝は以外なものでした。

ツール・ド・ラヴニール第9ステージ(2003)

Philippe Gilbert: The five races that changed my lifeより引用

 

プロ初勝利のことは忘れられない。上り坂のスプリントで、その後の僕の勝利のほとんどは、似たようなコースプロフィールでのものだった。これが僕のキャリアの青写真になったんだ。フィニッシュ地点の光景を未だに覚えている。小さな町であんまり人がいなかったけど、チームの皆にはそんなことは関係なくて、皆ありえないくらいハッピーだった。

パリ〜ツール(2008)

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僕にとってのはじめてのクラシック勝利で、本当に重要な勝利だった。僕は次の年にFDJを去ることが既に決まっていて、これが彼らに何かを残せる最後のチャンスだったから。僕にとっての最初のクラシック勝利は、彼らにとっての僕の最後の勝利だった。僕はFDJでプロデビュー以来数年間を過ごし、選手として人間として成長させてもらった。感動的で、特別な日だったよ。

ベルギー国内選手権ロードレース(2011)

ジュニアでは4位、U23では2位、プロになってからは2位に4回なっていたベルギー国内選手権。いいところで終わり続けて、モチベーションは信じられないくらい高いのに一度も勝ったことがなかったんだ。2011年のコースは平坦基調で僕向きじゃなかったけど、アタックを仕掛けて勝つことができた。予想してなかった勝利だったよ。ナショナルジャージを着ていると、常に国を代表して走っているという気分にさせてくれる。ベルギーでは自転車は特別なスポーツで、ベルギー人の心に住む文化みたいなものだ。惜しいところで勝利を逃し続けてきた僕にとって、この勝利は世界を手に入れたに等しかった。

ジロ・デ・ロンバルディア(2010)

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確かに世界選手権の勝利は僕の人生を変えたが、ロンバルディアの勝利も同じだ。雨が降っていて、ディフェンディングチャンピオンの僕はゼッケン1番を背負っていた。あの日は人生で一番きついレースだった。スカルポーニと僕は1対1で真正面から力勝負を繰り広げた。ちょうど前の週のティレーノでも同じように2人でタイマンを張っていて、デジャブみたいだった。僕は自分が持つ全てのエネルギーをペダルに込めた。自転車レースはいつでもこうあるべきだ。力と力の美しいバトル。深い苦痛を伴う真剣勝負。

リエージュ~バストーニュ~リエージュ(2011)

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フレシュ・ブラバンソンヌ、アムステル・ゴールドレース、フレシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。2週間に渡って行われる4連戦を全て勝った男は今までにいなかった。メルクスだってできなかったんだ!僕が勝利を重ねるごとにプレッシャーはどんどん増して、誰もが僕の勝利を期待していた。もしリエージュで勝てなかったら、その前の3連勝のことなんて皆全部忘れてしまうだろうだなんて感じていた。勝った瞬間は何をしたら良いかわからなくて、指を口にあてた。喜びと誇りが入り混じっていたよ。

この5つを選んだ理由

世界選手権の勝利も、アムステルの勝利も、ロンドの勝利もピックアップされてないのですが、この5つを選んだ理由がジルベールらしいんです。

僕にとって、スポーツは「感動」以外の何物でもない。僕自身が感じる感動と、僕が他の人に与えることができる感動。僕がこの5つのレースを選んだ理由はここにある。ファンの皆は僕の走りと勝利に喜びを感じると言ってくれる。こんなに嬉しいことはない。僕にとっては人々をハッピーにすることのほうが勝つこと自体よりもずっと大事なんだ。

「引退なんて考えてない。モニュメント全制覇を目指す」

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ベテランとなったジルベール。昨シーズン末のインタビューではこう語っています。

なんで引退なんて考えるんだ?僕はこの仕事が好きだし辞める理由がみつからない。もし違うことがしたくなったら引退するけど、まだその時じゃない。自転車に乗ってレースをすることを心から楽しんでるし、パリ〜ルーベみたいにまだまだ勝ちたいレースはたくさんある。

2017年にロンドを制して3つめのモニュメント勝利を手にしたジルベールは、2018シーズン初めには”Strive For Five (5のために争え)”というスローガンを自ら掲げ、モニュメント全制覇へのモチベーションにしていました。しかし、過去2度も2位に入っているミラノ〜サンレモでは75位。初出場の2007年以来、2回目の挑戦となったパリ〜ルーベでは勝負に絡む走りをするものの、終盤で補給をとれなかったことから低血糖状態に陥り、15位に終わります。

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(ロンドでニキ・テルプストラの後塵を拝するものの笑顔で表彰台に登るジルベール)

シーズンを振り返っても絶好調だったチームメイト、テルプストラのアシストを務めることも多く優勝をあと一歩で逃し続けます。ツールでも落車リタイアして、大きな勝利はつかめませんでした。

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(ツールでの落車)

確かに2018年は少しだけ苛立っていた。2位や3位ばかりで「全部やりきった」という感覚をフィニッシュラインで得ることができなかったからね。でもそういうもんだ。ニキ(・テルプストラ)に勝利を邪魔されたなんて考えたこともない。僕が勝てないのは、単純に彼が強かったからだ。彼にとって最高のシーズンだったんじゃないかな。

そして1年たった2019シーズンはじめのトレーニングキャンプ。”Strive For Five (5のために争え)”について質問されたジルベールは、笑いながらインタビューに応じました。

そのスローガンを使うのはやめたよ(笑)気持ちは捨ててないけどね。今年はミラノ〜サンレモが1つ目の大きな目標だ。でもチーム内にも十分勝利を狙える男が2人はいるし、僕にとって簡単なことじゃない。もちろん、パリ〜ルーベの勝利も簡単じゃない。昨年のパリ〜ルーベは学ぶところが多かったよ。補給は貰えるときには必要じゃなくてももらっておかなきゃいけない。石畳でボトルケージやらポケットやらから吹き飛んでしまうから。

レースで常に学び続ける36歳は、昨年の学びを今年の勝利へとつなげたわけです。

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(ミラノ〜サンレモでアラフィリップを牽引)

振り返ってみれば、アシストに徹して68位に終わったミラノ〜サンレモではチームメイトのアラフィリップが優勝をさらい、パリ〜ルーベの勝利は自身でしっかりと手中に収めました。

僕は情熱を注げることを仕事にできている、とても幸福な人間だ。50年も特に好きでもないし、必ずしも稼ぎも良くない仕事をし続ける人々がいるのに。もし僕みたいな恵まれたポジションにいる人間がプロ選手人生がどんなに難しいかを語るなら、違う角度から物事を見たほうが良い。僕らはそんなふうにネガティブに語るべきじゃない。僕の夢は大きなレースで勝利することだ。既に勝ったレースでもう一度勝つこと、そして勝ったこともないレースで勝つこと。

引退はまだまだ先になりそう。ミラノ〜サンレモを制す姿が見てみたいですね。

参考ソース

 

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