天才少年はいかにしてチャンピオンとなるのか?ピッドコック成長の理由。
Photo by Limor Zellermayer on Unsplash

ベルナル、ソーサ、イヴェネプール、ピッドコック…。次々と自転車ロードレース界に期待の新人が現れています。

サガンやクウィアトコウスキーの再来を予感させる活躍。

そこで今回の記事のテーマは、

才能ある若い原石は、いかにしてチャンピオンとなるのか?

ということ。

今話題のトム・ピッドコックへのインタビューをベースに、科学者やコーチ、スポーツ心理学者の知見を踏まえたCyclingWeeklyの記事があったので読んでみました。原題は"Talent or training? How a gifted young rider becomes a champion"(才能?それともトレーニング?若き天才選手はいかにしてチャンピオンになるのか)

話が飛んでる部分があって少し読みづらい点が残念なのですが、結構興味深いデータや主張もあったので、私見を踏まえてまとめてみました。

結論から言えば、「チャンピオンになれるかは才能で決まる。才能を開花させられるかどうかは、その選手自身が正しい練習をできるかで決まる。コーチはそのサポート役になりうる。」

お楽しみください。

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才能は、存在する。

本気でスポーツに取り組んだことがある人なら、一度は思うこと。

それは「この世には才能というものが存在する」ということです。

でも、スポーツの世界は才能だけで勝てるほど甘い世界じゃありません。

それでは原石は、いかにしてチャンピオンとなるのか。

それがこの記事の内容です。

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(2008年のジュニアシクロクロス世界選手権で2位となったサガン)

肉体的な限界はDNAで決まってしまうのか。それともトレーニングで限界を超えられるのか。

アメリカのロヨラ大学のスポーツ生理学専門家、ローラ・デュガス博士らのグループは、10代の若いアスリートを対象にした研究である事実を明らかにしました。

それが、DNAによる身体能力の差は確かに存在する、ということ。

言い換えれば、トレーニングは大事だがそれだけで選手の成績は予測できない、ということです。

スポーツ関係者の間で一時期話題となった名著「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? アスリートの科学」(デイヴィッド エプスタイン著)でも、同じようなことが説明されています。

今まで一部の間で信じられてきた「一流・天才と呼ばれる人は、例外なく1万時間の練習に打ち込んでいる」という「1万時間ルール」は間違った概念であると証明したのです。才能がなければ、1万時間練習したところで、誰しもが才能を開花させる事はできないのです。

注意してほしいのは、ここで議論しているのは「日本一になる」「世界一になる」レベルの才能の話ということです。

すぐそばにいる人たち、その全員にあなたが勝てないのなら、それは「あなたに才能がないから」ではなく、おそらく練習不足です。ちゃんと練習さえすれば、ベースを身につければ、周りにいる人達よりは簡単に上に行けるはず。

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(写真:2006年のU23世界選手権TTにケニア代表として出場したフルーム。コミッセールと接触し落車。)

才能の話に戻ります。

当たり前の話なんですが、才能があるだけじゃ意味がなくて、正しいトレーニングを積まないとその才能は開花しません。

気付かれることなく埋もれている才能だっていくらでもあります。

埋もれてしまう一つの原因が、間違ったトレーニング。

なぜなら、間違ったトレーニングは、燃え尽き症候群や故障につながるからです。

先述のデュガス博士の別の研究では、もう一つの興味深い示唆があります。

“Inappropriate training as a developing rider can lead to burn-out, which may impact upon outcomes later, as an adult athlete,” says Dugas. “Our research group has published on this subject extensively. Young athletes who specialise too early are at a considerably higher risk of sports-related injuries, particularly overuse injuries which take much longer to heal.”

According to Dugas, early specialisation is crucial only in sports that rely heavily on technique and hand-eye coordination, such as golf and tennis. In an endurance sport like cycling, a youngster may pay a heavy price for narrowing their focus too early.

“I am also wary of too many hours [of training],” adds Dugas. “Our data was clear that, for kids, as soon the number of hours per week of training exceeded their age, the risk of overuse injury jumped significantly.


(抄訳:過度なトレーニングは勿論のことながら、若いうちから特定のスポーツに絞ってトレーニングをしてしまうこと自体が、スポーツ障害の原因となりうる。英才教育が効果的なのは、ゴルフやテニスなど、目と手の動きが重要なスポーツだけ。自転車のような体力スポーツは、子供の頃から特化させるべきものではない。具体的な数字で言えば、若い選手にとって、週あたりのトレーニング時間がその年齢以上になると、オーバートレーニングのリスクが急激に上昇する。)

ローラ・デュガス(スポーツ生理学専門家)

例えば、15歳の少年であれば、週15時間以上トレーニングをすべきではないし、そのうちの3分の1程度は特定のスポーツ以外の遊びによる体力づくりを心がけたほうがいい、というのです。

2008年ジュニアTT世界選手権で1位となったクウィアトコフスキー。
Inringより引用)

スイートスポットを探せ。良いコーチの条件とは。

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才能を開花させるために十分なトレーニングを積ませることと、オーバートレーニングになってしまうリスク。この2つのバランスを取ることは非常に難しいことです。

「トレーニング不足」と「オーバートレーニング」の間のどこかにあるスイートスポットを探し当てることは、コーチの仕事です。

ピッドコックは語ります。

“I first began using a training diary when I joined the Olympic Development Apprentices,” says Pidcock. “I started recording my training in Excel and my coach monitored it. That’s when it became structured, in my second year as an under-16.”

This monitoring added control, specificity and, whenever necessary, a degree of caution.

“There were specific things in the plan intended to make me better that I wouldn’t necessarily have chosen to do, like more time on the rollers or turbo, controlled training, and less time on the jumps.”

Pidcock pauses before wryly confessing: “Well, I say that, but on rest days I went to the dirt jumps anyway.”

(抄訳:僕がトレーニング日誌を付け始めたのは、オリンピック育成チームに入った15歳のときからだ。エクセルにトレーニング記録をつけて、コーチがそれをチェックした。そして、2年目の16歳の時には、トレーニング計画がより計画性を帯びてくるようになってきた。例えばローラー台での練習を増やして、ダートでジャンプの練習する時間を減らしたりして。まあでも、オフの日には勝手にダートのジャンプ台で遊んでたけどね(笑)。)

トム・ピッドコック

面白いことに、彼が16歳の頃のトレーニング記録を紐解いてみると、オフの日の自転車遊びを除けば、週あたりの練習時間が16時間を超えることはなかったようです。

これは先述のデュガス博士の「週あたりの練習時間は年齢を超えるべきではない」という理論とマッチします。

16時間って、少しでもちゃんと自転車競技してる人ならわかると思うんですけど、トレーニングで距離感が麻痺してくると結構すぐいっちゃうんですよね。

土日に5時間ずつ乗って、あと平日に3日だけ2時間走る日作ればそれでおしまいですから。

世界を目指して熱くなっている高校生なら、これくらいは乗っていても不思議ではない。

そこで歯止めをきかせてスイートスポットを探し当てるのが、コーチ陣ということになるのです。

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